脳は永らく未知の器官でした。
エジプト文明が栄えていた頃、脳は鼻水を作る器官と考えられていた、なんて話もあります。
それぐらい、どんな働きをしているのかわからない、謎の器官だったのです。
しかし、現代では、医学のみならずさまざまな学問が発達し、医療機器の発展も相まって、
脳のどこが、どのように働いているかが少しずつ明らかにされてきました。
その中でも、前頭前皮質という部分に感情を抑えて理性的に行動するための機能として
「実行機能」というものがあるということがわかってきました。
では、この「実行機能」はどんな働きをしているのでしょう?
たとえば、人間は、料理をしたり、片付けをしたり、宿題をしたりと、
日常生活の中でさまざまな活動をしています。
実行機能は、このさまざまな活動を行う時に必要な、
という部分に関わっているのです。
もちろん、これだけではありません。
たとえば、料理をしている時に電話が鳴ったら手を止めて電話に出ることもあるでしょう。
このように、
あるいは、
味付けをするという目的の行動を取ることも実行機能の働きなのです。
まとめていえば、
実行機能とは、「目標に向けて気持ちや行動をコントロールする能力」と言えそうです。
この実行機能が上手く働いていないと、
電話でおしゃべりしている間もお鍋を火にかけたまま、
甘すぎたり辛すぎるおかずができてしまうかもしれませんね。
お子さまなら、
机の上がいつも散らかって宿題をしていたはずなのにいつの間にかテレビに夢中、
お手伝いして欲しいのに声をかけても返事がない、
上手くいかなくて「や〜めた!」なんてことがありそうですね。
これだと、見ている方がイライラしてしまいます。
でも、周囲から見たらやる気がないように映るのかもしれませんが、
これは無意識的に行ってしまうことで、むしろ取り掛かることに強い困難を抱えていて、
「わかっていてもできない」という苦しさを抱えていることが多いのです。
subaco switchでは、このようなお困りごとに応えるべく、
実行機能のトレーニングを行っています。
おそらく現在、人体を構成する組織の中で「脳と神経」ほど
多方面の学問分野から注目されている臓器はないでしょう。
・ 細胞レベルでの物理的な働きを解明してきた「生理学」(<基礎医学<医学)*1
・機能別に分類されたシステムとして「神経系」をとらえ、疾病を理解しようとする
「神経学」(<内科学<医学)。
・高次脳機能(≒認知機能)*2
を分類し、それぞれの機能を、機能局在間のネットワークとしてとらえ、
情報処理過程の詳細を解明し、
人間の認知機能の実態とそれに基づいた行動を理解しようとする「認知心理学」(<心理学←哲学)。
上記のように「脳と神経」の働きに関しては理科系、文科系をまたいで世界中で研究されていますが、これら全てを含んだ総称として「神経科学」と呼んでいるようです。
特に近年、「神経科学」は脳の奥深くの血流動態をとらえ、視覚化できるfunctional-MRIやPETなどの脳機能イメージング技術の進歩や、基礎研究においては光遺伝学などの画期的な実験手法の開発等により、これまで手をつけることができなかった部分の研究が一気に進んでいます。
また、人間の脳で実行されている情報処理とコンピューターにおける情報処理過程には共通点も多く、人工知能(A.I)開発者など工学系の人材が人間の脳の情報処理過程の解明にこぞって参入していることもあいまって、「脳科学」「神経科学」花盛りといった様相を呈しています。
人文学など、人間の心と行動、あるいは精神性、社会性といった分野を対象とする人文系学問に於いても脳機能と関連付けた新しい意味づけがなされたり、文化や芸術、宗教といった自然科学とは別次元で成立している人間の営みも、高次脳機能との関連のなかで、自然科学的、神経科学的な解釈を加える作業がなされています。
教育、保育の分野においても「神経科学」で得られた知見を取り入れた新しい試みがなされており、私たちsubacoでも常に新しい知識を取り入れた療育を実践しています。