大阪市天王寺区・西区の
児童発達支援・生活介護「スバコ」

《2017年4月号》靭だより 「りんごが食べた?」


 新年度がスタートし、早くも一ヶ月が経とうとしていますね。少しずつ新しい環境にも慣れ始めた頃でしょうか?今年度もたくさんの「できた!」に出会えるよう、子ども達と一緒に目標達成を目指して頑張りたいと思います!

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「りんごが食べた?」

 Sくんはニコニコ笑顔が可愛らしい小学校4年生の男の子です。4年生になると毎日宿題も盛りだくさん!宿題に苦戦して、お友達と遊ぶ時間が減ってしまっています。漢字ドリルや単純な計算問題はテキパキとこなしているのですが、国語の読解プリントや算数の文章問題で手が止まってしまいます。

 そこでまず、文章読解に必要なスキル、例えば、語彙力や能動・受動態、助詞の理解などについて検査を行いました。すると、助詞「を」「が」「に」で表現される場面の変化のイメージが曖昧で、助詞を複数含むと読み取りが難しくなるようでした。日本語は主語が文頭になくても、助詞の働きで「子供にお母さんが投げる」のように意味が成り立ちます。しかし、Sくんは語順通りに「子供」が「お母さん」に「投げる」で捉えているようでした。

 そこでSくんとトレーナーは主語が始めにはない文の主語探しを行いました。

 

りんごが食べた?

「だれが何をした?ゲーム」というレッスンです。人物カード、物カード、動作カードをたくさん作り「が」「を」と並べて文を作り実際に再現します。『「りんご」「が」「Sくん」「を」「食べた」』こんな場面を再現しようとすると、「絶対嫌やし!」と怒られてしまいました。

じゃあ「りんご」と「Sくん」入れ替えてみると?「Sくんがりんごを食べる」。無事りんごを食べることが出来、Sくんも一安心です。そんなホッとしているSくんにトレーナーは意地悪をしかけました。

「が」と「を」を入れ替えて、「Sくんをりんごが食べる」にしたのです。

「何してるの?」と不思議顏のSくんに、再現をしてみるとびっくり。「りんごがSくんをたべた」と同じになりました。日本語は助詞によって、語順通りではない表現もできるのです。Sくんは「が」と「を」を急いで入れ替えました。

 語順からではなく、助詞の働きを理解しながら文を読み解き始めたSくん。
現在は助詞を使って面白い場面作りに挑戦中です。助詞の働きがはっきりしてくると、場面のイメージもしやすくなるね。宿題を早く終わらして、もっともっとお友達と遊ぼうね!(喜多村)

 

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「両足でぴょん!」

 皆さんは、両足を揃えてぴょん!とジャンプをしながら進むことができるでしょうか?

いつのまにかできるようになっていることが多いと思いますが、ぴょん!とジャンプをしながら前に進むことができるようになると、身体を使った遊びのバリエーションが増えてきますね。私はカエルやうさぎの真似をしながら友達と遊んだことを懐かしく感じます。

 4歳のKくんは明るく元気な男の子です。何事にも積極的で楽しそうに取り組んでくれますが、少し身体の使い方にぎこちなさがあるようです。踏み台の上からジャンプ!フラフープの輪っかの中をジャンプ!

・・・あれれ?Kくんは両足でジャンプをするのが少し苦手なようです。

 

両足でぴょん!

 Kくんがジャンプする姿をよく観察してみると、踏み切る時に右膝関節を先に屈曲させ、体幹を左に回旋させるようにして左下肢で踏み切ります。この姿からKくんは両側運動協調機能(身体の両側を協調的に動かすこと)に課題があるのではないかと考えました。

そこで、「仲良くおひっこし」という左右のカップを同時に移動させる検査を行いました。左右の手を身体の中心で交差させながら移動させるクロスver. では、Kくんはカップを両側同時に移動させることが難しく、片方ずつ移動させていました。このことから、Kくんはやはり両側運動協調に課題があることがわかりました。

 

両足でぴょん!

 では、両側運動協調の機能はどのように発達していくのでしょうか?

両側を協調的に操作することができるようになるためには、まず身体の左右を知ることが必要です。そして、左右を知るためにはその境界線である“中心”を知る必要があるのです。
私たちが身体を動かす時に左右を区別する基準となってくるのが「身体の中心軸」ですが、これは『今どのくらい傾いているのか』という前庭感覚の情報と『今身体のどの部分がどのくらい動いているのか』という固有受容感覚の情報が統合されることによって確立していきます。身体の中心がわかってくると、両側で同じ動作ができるようになったり、左右を別々の役割を持って使用できるようになってきます。Kくんは、両側協調の中でも「両側を同時に動かす」という段階に課題があったのです。

 そこでトレーナーはまず前庭感覚と固有受容感覚を統合し身体の中心軸を意識するために、縄ばしごやディスクスィングを使用してアプローチを行いました。揺れる中バランスをとりながら一生懸命身体を動かします。初めはぎこちなさがあった縄ばしごもスムーズに登れるようになりました。

 さてもう一度、踏み台の上からジャンプ、フラフープもジャンプして進んでいきます。やったぁ、両足ジャンプができたよ!また一つ身体の使い方をマスターしたね。(河口)

 

靱だよりH29年4月 (PDF版)

 

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