《2017年12月発行号》靱だより「ぼくは動物探検隊」他

今年も残すところあとわずかとなりました。日頃の皆様方のご支援・ご協力に支えられながら、今年もsubacoはたくさんの子ども達の「できた!」に出会うことができました。来年もたくさんの「できた!」に出会えるよう、subaco靱公園をよろしくお願いします。皆様よいお年を!
subaco study
「ばくは動物探検隊」
2017年は、どんな年だったでしょうか。subaco study靱公園は子どもたちと目標に向かいながらたくさんの「できた!」に出会えた一年になりました。
そんな2017年、最後に紹介するのは、幼稚園に通うT君です。動物や恐竜が大好きでsubaco study靱公園に来ると、動物の人形を使ってお友達や職員と楽しく活動しています。しかし・・・。T君は、遊ぶ前にいつも困ってしまうことがあるのです。T君は活動を始めるとき「今日は何する?」とトレーナーが聞くと「動物さんと遊ぶ!」と元気に答えてくれます。しかし…「どこで遊ぶ?」と、聞くと「どこで遊ぶ…?」「・・・」と、今までの笑顔がしょんぼり顔になってしまい、遊びが始められないのです。
T君の元気が無くなってしまった言葉、「どこで遊ぶ?」には<疑問詞>が含まれています。<疑問詞>は、私たちがコミュニケーションを取る手段の一つとして情報の収集・交換に欠かせない重要な役割を果たしています。今回の「どこ」は “位置情報や場所” を聞くときに使用され、答えるための一つとして「上」「下」などの<位置関係を表す言葉>の獲得が必要になるのです。
T君にも検査実施しました。一つだけ置かれた積木に「この積み木の上に置いて」ともう一つの積木を置いてもらい同様に、左右や下にも積み木を置く指示を出します。すると「下」「右」「左」に置いてもらうときに戸惑ってしまい積み木を置くことが難しかったのです。その他にも様々な検査も実施した結果、原因の1つとして位置関係を表す言葉と意味の結びつきに難しさがあることが分かりました。
そこでT君とトレーナーが取り組んだレッスンが「動物大発見」です。T君に部屋の中を探検してもらい、色々なところに隠されている動物を見つけてもらいました。探す手掛かりとして、T君には「机の下」などヒントを伝えます。始めは色んな場所を探しながら、偶然に動物を見つけていたT君ですが、今では「T君、右の部屋にゾウがいるよ」と伝えると迷うことなく右のお部屋を開けて「ゾウさん、いたよ!」と位置関係を表す言葉と意味を結びつけられるようになってきました。
T君、次は “どこの場所” に動物が隠れているかな?
さあ、今日も探検に出かけよう!(飯田哲也)

subaco study靱公園からのお知らせ

subaco kids
「ぷにぷに!これな〜んだ??」
下の写真はsubaco kids靱公園で大人気の教具「ぷにぷにタマゴ」です。触ってみると弾力性があり、握るとぷにぷにとやわらかく次々とその形を変えていく不思議なタマゴをどのように使うのでしょうか??
今回は、身の回りの物や人を必要以上に触ったり、叩いたりする姿がよく見られるH君に、このタマゴを渡してみました。すると落ち着いて集団活動に参加できるようになったのです。このタマゴには、いったいどんな秘密があるのでしょうか?

私たちは光や音などのたくさんの刺激に囲まれて生活をしています。その刺激を感じとる働きを「感覚」といいます。感覚には、普段からよく耳にする「視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚」の五感の他にも、自分の身体の傾きや回転・スピードなどを知るための「前庭感覚」や、筋肉や関節の動きなどを知る「固有受容覚」があります。これらの感覚から受けとった情報を脳の中でうまく整理することができないと、場面に応じた適切な行動がむずかしくなることがあるのです。
subaco kids靭公園に通うH君は、身の回りにある物や人を必要以上に触ったり、叩いたりする姿が見られました。このようなH君の行動は「感覚探求」と呼ばれています。
そこでH君と一緒に『ぷにぷにタマゴ』というスペシャルアイテムを用いてアプローチを行いました。
おやつの時や配膳を待っている時にも常に触覚刺激を求めて席を立ってしまうH君と一緒に、ぷにぷにタマゴを触ります。グッと握ると中からはタマゴのきみが顔を出します。弾力もあり柔らか過ぎないため、しっかりと感覚を入力することができるのです。視覚的にも楽しめるのでH君も楽しみながら落ち着いて配膳を待つことができるようになりました。
「ぷにぷにタマゴがないと、落ち着けないのでは意味ないんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、必要な感覚が十分に満たされることで、他の情報に対しても目を向けることができるようになります。このような経験を繰り返すことで、脳の中で少しずつ感覚が整理されていくのです。一見、なんでもないようなおもちゃに見える「ぷにぷにタマゴ」そこから、たくさんの良い経験が生まれるといいですね。(重松大介)

subaco kids靱公園からのお知らせ

靱だより 12月号(PDF版)
これまでのおたよりはこちら