大阪市天王寺区・西区の
児童発達支援・生活介護「スバコ」

《2018年2月号》靱だより「動物、みーつけた!」他


まだまだ寒い日が続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?早いもので2月が過ぎれば進級・進学の季節ですね。
今月も寒さに負けず、元気いっぱい「できた!」を積み重ねていきましょう♫

 

subaco study

「動物、みーつけた!」

早いものでもう3月!年度の終わりを迎え、4月からの新学年・進級・入学などを楽しみにしているお子さまも多いのではないでしょうか??小学3年生のKくんもそのひとりです。お話をするのが大好きで「ドラえもんがいたら何をお願いする??」「ひみつ道具があったら、何が欲しい?」など、いつも楽しいお話をしてくれます。

 そんなある日、Kくんに好きな動物の名前を書いてもらっていると・・・「らくら… あしる…」あれれ?「らくら?あしる?」Kくんは何を伝えたかったのでしょう??実は「らくだ あひる」と伝えたかったのです。Kくんは「だ・ら」「ひ・し」など音の似ている文字が含まれている言葉になると、書き間違えが多くなってしまうことがあるのです。なぜ書き間違いが起こってしまうのでしょうか?
 そこには、言葉がどんな音のかたまりに分かれているのか。音の一つ一つを認識する力である〈音韻認識〉が関係しているのです。そこでKくんに、ELCという音韻認識を確認するための検査を行ないました。トレーナーが伝えた言葉を「復唱」したり「逆唱」してもらいます。すると「 あたま を反対から言うと?」「ん〜 あたま…あたま…」と考えながら「わからん!」と諦めてしまいました・・・。

 検査結果からKくんは〈音韻認識〉に課題があることで、音と文字を対応させることに難しくなっていることが分かってきました。課題が分かったところで、Kくんと行なったレッスンは「くるくるまわしてみつけよう」です。例えば、ひらがなカード「も」「れ」「ん」などランダムに並べたカードを並べ替えて単語を見つけ出します。「も・れ・ん」であれば「れもん」という単語が隠れています。まずは「こ・た」などの2文字からスタートし、音と文字を結びつけていきました。始めは「ない…いない…」と止まっていたKくんですが、今では「る」「い」「か」を見て「あっ、いるか!!」とすぐに並べ替えて3文字の単語を作れるようになりました。

音と文字が結びついてきた事で、書き間違えも少なくなってきたK君です。

さぁ、春はそこまで来ているよ。がんばろうねKくん!!(上田 千晶)

subaco kids

「すごいでしょ!パンツ履けたんだよ」

皆さんは、腕時計やブレスレットをつけた感覚が気になってしまったり、タートルネックの洋服の襟元が苦しく感じたりする経験はありませんでしたか?? 今回はパンツを履くことが難しかったKさんの取り組みを紹介します。  
 Kさんはジャンプをしたり、抱っこやおんぶをしてもらうことが大好きな幼稚園に通う4歳の女の子です。そんなKさんの保護者様からは「着ることができる服が限られていて、パンツも嫌がってしまう。幼稚園でもなかなかパンツを履けずに、ズボンだけを履いている」というご相談を受けました。保護者様とも相談し、自立に向けて「自分でパンツを履く」という目標に取り組みました。

 まずKさんにパンツやズボンを提示し、下衣を着用する様子を観察してみました。すると、ズボンは難なく履くことができたKさん。履くという「動作」はスムーズに行えるようです。しかしパンツはやはり履こうとはしませんでした。では何故パンツを嫌がるのでしょうか?さらに観察してみると、あることに気づきました。Kさんはパンツを手にした時は必ず「ウエストゴムの部分に両手を引っ掛け左右に引っ張る」という動作を行なっていました。この様子から、パンツのゴムや生地で締め付けられる圧迫感(圧覚)など触覚の入力などに苦手さがあるではないかと仮説を立て検査を行いました。Kさんが大好きなおんぶをしている時にゴム紐でぎゅっと臀部(お尻の部分)を締め付けてみました。するとKさんはすぐにゴムに手をかけて取り除こうとする様子がありました。他にも、チクチクした感覚の素材を下肢や臀部のあたりに触れさせてみてもすぐにその刺激から遠ざかるような反応も見られました。これらの結果からKさんは触覚・圧覚の情報処理機能に課題があることが分かってきたのです。通常私たちは、感覚刺激に対して危険性のないものであれば、他に意識するべきところに注意を向けられるように脳内で感覚刺激の強さが調整されます。その為、服を着ていても服が肌に触れる感覚が気にならず生活ができるのです。これを感覚調整機能といいます。この機能に課題があると動いた時に肌に服が擦れるちょっとした感覚も気になってしまい、疲れやすくなったり、不快な刺激に感じてしまいます。Kさんはパンツを履くことで臀部に触れる布やゴムの締め付け感が気になってしまいパンツを履くことが難しくなっていたのです。

そこでKさんと一緒に少しずつ色々な感覚を経験し、肌に物が触れる感覚への嫌悪感を軽減できるよう、様々なアプローチを行いました。その1つがボールプールを使用しアプローチです。ボールで遊ぶことは好きなKさんでしたが、ボールプールへは中々入れずにいました。ボールを出したり入れたりする中で、少しずつボールプールに入り、たくさんのボールに全身を包まれボールが肌に触れる感覚を経験しました。様々な感覚を知ったKさん…。再びパンツを提示してみると…。初めは戸惑いがあったものの、自分でパンツを履くことが出来たのです!!「やったぁ、できたね!」とトレーナーがKさんを抱きしめると、にっこり笑い返してくれました。

(パンツ履けたよ、すごいでしょ!)

言葉にならなくても、Kさんの気持ちしっかり伝わったよ(^_^)(河口知美)

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カタツムリに変身大作戦!

Mくんは、自然や生き物が大好きな男の子。そんなMくんは、目に映る様々な物に興味津々で色んな物が気になってしまい、つい目に入った物へ向かって走り出してしまうことも多々あるようです。subaco switch 靭公園ではそんなMくんと一緒に近くの靱公園へ出かけました。公園の周りには、自動車やバイク・自転車など危険なものもたくさんあります。そこで出発前にMくんと「公園に着くまでは急に走り出さない」という約束をして出発しました。しかし・・・。Mくんは公園へ向かう途中に鳩を見つけると、周りを気にせずに鳩に向かって嬉しそうに走り出してしまいました。また気になる物があると1つ1つに注意が向き、なかなか目的地の公園までたどり着けないMくん・・・。何故なのでしょうか??検査を実施していく中で『選択制注意』という機能に課題があることが分かってきました。

 私たちは移動中に気になる物が目に入っても、目的地まで必要な刺激とそうでない刺激を選択して行動することができます。これは「注意機能」と呼ばれる働きの中でも『選択性注意』という機能が働いているからなのです。この機能によって、目に映るもの全てに注意を向けることなく、必要なものに注意を向けて行動することができるのです。

 そんなMくんと行った作戦の1つが「カタツムリに変身大作戦!」です。この作戦では、イメージする(表象する)ことで、気をそらすことができる「表象戦略」を用いて取り組みです。M君は、どんな時でもゆっくり進むカタツムリになりきることで、気になることから気をそらすことができ、公園から帰る時には急に走り出すこともなく安全に歩いて帰ることが出来ました。

見事、カタツムリに変身したMくん。次は何に変身しようかな??(田中 琴音)