大阪市天王寺区・西区の
児童発達支援・生活介護「スバコ」

《2018年4月号》靱だより「名推理!なぞはすべて解けた!!」他


 春風が胸元を心地良く通り抜け、すっかり過ごしやすい季節となりましたね。ゴールデンウィークを間近に迎えて、子どもたちの口からもウキウキするような話題が多く聴こえてくるようになりました。どうか良い連休をお過ごしくださいね。

 

subaco study

「名推理!なぞはすべて解けた!!」

 新学期も始まり、希望と期待に心躍らせているころではないでしょうか。

 小学校に通うTくんも、その一人「この漢字読める!!」などと元気いっぱいに報告してくれます。そんなTくんですが、ひらがなを読んでいると気になることが・・・。「 このひらがなは、…る? あれ?? …ろ??どっちだったかなあ… 。」と困ってしまいます。

 なぜ、正しく読めなかったのでしょうか? Tくんにどんな課題があるのかを確認する為に検査を実施しました。まずは、Tくんの見る力を知るため『フロスティッグ視知覚検査』を実施しました。するとT くんは、位置や方向の違う絵の中から見本と同じ形を見つけ出す検査に苦戦する様子が見られました。この検査の結果から、Tくんは目から入った情報をもとに文字の『はらい・はね・曲線』など、文字1画1画の配置を把握するときに使われる機能『空間認知機能』に難しさがあることが分かってきました。

 そこで、おこなったレッスンは『名探偵、なぞはすべて解けた!!』です。パズルのようにバラバラになった一つの文字を、どこの位置に置けば良いのかを推理しながら組み立てていきます。置く位置を間違えると・・・さぁ大変!!どんどん迷宮入りになってしまいます。 左右、上下など位置関係に注意しながら、名探偵の推理開始です。初めは、1文字完成させるのに3分程度かかっていたTくんですが、レッスンを行なうことで「これは・・・まるがここにないから・・・あっ、ろ!!」と位置を正しく捉えられるようになったTくん。

 さすが名探偵、これからも一緒に解決していこうね!(上田 千晶)

 

subaco kids

あなたのことを知りたいのです。」

 例えば何かにぶつかったり、つまずいたりして転んでしまったとき。私たちはとっさに手をついたり、ケガをしないように受け身を取ることができますよね。このような動作が自然にできることは、自分の身体を守るためにもとても重要です。

   『小学校学習指導』でも、 “いろいろな方向への転がり”“手で支えての体の保持や回転”ができるようになることを目標に、“マットを使った運動遊び”として、体育の時間に取り入れるように定められています。 マット運動の基本となるのが「でんぐり返し」とも呼ばれる前転運動。subaco kids靱公園でもたくさんの子ども達が前転に取り組んでくれています。
 しかし、中には「ドシン!」と、背中から落ちるように回ってしまう子どもの姿が…うまく前転ができるようになるにはどうすればよいのでしょうか?

 「手の位置はここだよ。」「頭はここに置いてみたら?」このように、前転をうまく行うためのスキルを教えてあげることも有効な指導のひとつだと思います。実際に、スキルや経験の不足によってうまく前転ができないというケースも少なくありません。
 しかし、身体の使い方のぎこちなさによって、日常生活に困り感を抱えている子ども達にとってはスキルや経験の不足を補うだけでは解決できないこともあるのです。
 
 小学校2年生のIさんも、前転の際に背中から落ちるように回ってしまう子どものひとりでした。彼女は前転の際にほとんど身体が丸まらずに、真っ直ぐに伸びたままマットに背中から接地してしまうという様子が見られます。subacoの取り組みは、そのまま練習をスタートするのではなく、観察からどこにつまずきがあるのかを考え、検査を行うことでそれを明らかにしていくのが特徴です。

 子どもたちが生活の中で感じている難しさを知るためにも、私たちはこれを重要なことだと考えています。Iさんのケースでは、身体の動きを感知する「固有受容覚」の入力に課題があることがわかりました。これを基にトレーナーが行ったレッスンが「クッションからの大脱出!」です。このレッスンの内容は、ビーズクッションで上下から身体に圧をかけ、感覚を頼りに、クッションで見えなくなった身体を動かし脱出するというものです。一見前転と何の関係もない活動のように見えますが、固有覚への刺激がたくさん含まれるこのレッスンは、彼女にとってはとても有効なものになるのです。Iさんはこのようなレッスンを行い、スムーズに前転ができるようになりました。

 subacoのアプローチのはじまり。それは、まず子どものことを知ることから。前転をできるまで何度も繰り返し練習するのではなく、どうして前転がうまくできないのかを考えること。その原因は子どもによってそれぞれ違います。子どもの「できた!」に出会うために、近道はありません。ひとりひとりに寄り添うように…。私たちが大切にしていることです。(重松 大介)

 

 

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僕の辞書に“負け”という文字はない!」

 Y君は恐竜が大好きな男の子です。4月からはピッカピカの一年生!自分からお友達に話しかけに行くのが好きで、とっても好奇心旺盛です。

 そんなY君、実は負けることが大嫌いで、勝負に負けると怒ったり泣いたりしてお友達を困らせてしまうことがあるそうです。「僕は絶対負けることなんてない!負けるなんてありえない!」一度負けてしまうと、気持ちを切り替えることが難しいようです。

 そこで、なぜ切り替えることが難しいのかを知るために「数字探し」という検査を行いました。この検査では、たくさんの数字の中から、決められた数字を探して線を引いていきます。Y君は1問目、2問目と同じ数字に線を引く様子が見られました。この検査から、Y君は、注意を向ける対象を切り替える機能である「転換性注意機能」に苦手さがあることが分かりました。

 苦手が分かったところでY君とトレーナーは、負け以外の事に注意を向けやすくする活動として「嘘か本当か見破れるか、恐竜レース」を行いました。この活動では、10メートルほどの廊下で恐竜になりきりレースを行います。勝ちたいですよね。ですが、なんとこのレースでは、負けた人には恐竜シールがもらえるのです。

 さぁ始まりました「恐竜レース」両者一斉に飛び出しました!Y君恐竜、先生恐竜を差し置いてトップに躍り出ました。しかしY君恐竜、大きく転倒!その間に先生恐竜が追い抜き、1位は先生恐竜!負けてしまったY君恐竜・・・「あー、コケてしまったから負けちゃった(^^)」と負けてしまったのにとても楽しそうでした。

 Y君の辞書に、「負ける=悪いこと。だけど楽しい時もある。」と書き換えられたみたいですね。 (田中琴音)

 

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