【2018年2月発行号】 すばこだより「仲間を助けるために!!」他
梅の蕾は膨らんで、健気に春の訪れを待ちわびる季節となりました。まだまだ寒さは残りますが、一足早く素敵な笑顔を咲かせていきましょう。
subaco switch
「仲間を助けるために!!」
Aくんはゲームが大好きな小学6年生の男の子。3月には卒業式を控えているのですが、Aくんのお母さんには少し心配な事があります。それは卒業式で卒業証書を貰うまでの間、ふらふらせずに並んでいられるかです。
そこでswitchでも卒業式に見たてて列に並ぶ姿を見てみました。賞状を貰うまでの間、始めは“気を付け”をしていても、すぐに“休め”の姿勢になり、周りをキョロキョロ見渡してしまいます。「ビシッと格好良く立ちます」と声を掛けると気を付けをして並び直すのですが、やはり最後まで続けるのが難しく姿勢を崩してしまいます。
私たちは、生活する中で目や耳などから入ってくる情報を処理するために、情報の一部に注意を向けたり、対象を変えたり、同時に複数の対象に注意を配分しなければなりません。この様な働きを「注意機能」と呼ぶのですが、Aくんはこの注意機能に課題があるのではと考え、検査を行いました。
検査結果から必要なものだけに注意を向けたり、ひとつのことに注意を向け続けることが難しいという事が分かりました。つまりAくんは、色々な所に注意が逸れてしまい、自分の姿勢に注意を向け続ける事が難しいと考えられます。
そこで、今回はAくんの大好きなキャラクターを取り入れた「ドンキーコングチャレンジ」を行いました。部屋の壁に、敵のキャラクターを貼り付け、Aくんがふらふらしていないか見張っています。トレーナーが賞状を読んでいる間”気を付け”が出来ていればレベルクリア!一歩前に進めます。最後に賞状を貰えたら、救出成功です!
初めはどんな敵がいるのかキョロキョロとしてしまっていたAくんでしたが、今は負けなしです!自分に注意を向け続ける事が出来るようになってきました。卒業式に敵はいないけど、格好良い姿をみんなに見せてね!(宇住庵由里菜)

subaco study
「見えた!さんかく!」
Nくんは保育園に通う4歳の男の子です。絵本やおもちゃの車で遊ぶことが大好きで、「せんせ〜い!」といつもニコニコ笑顔でご挨拶をしてくれるNくんなのですが、集団活動への参加には少し難しさがあるようです。
周りを見て一所懸命まねをしようとするのですが、テンポがお友達よりすこし遅れてしまったりすることがあります。特に工作の折り紙の時間が苦手なようです。手先の運動に課題があるのかな?・・・様子を観察してみると、どうやらそうではないようです。どうやったら、先生と同じ形を作れるんだろう?試行錯誤したNくんの折り紙は、気がついたら小さく手のひらの中に握りしめられていました。この難しさはどこから来ているのでしょうか?
今回、トレーナーは「表象機能」と呼ばれるイメージする力に着目しました。表象機能とは、簡単にいうと「イメージする力」です。例えばNくんは、「りんご」と聞いてそれが食べ物で丸い形をしているということは大まかに頭の中で描けているようですが、りんごと車だとどちらが大きい?などイメージの中で物と物の関係を比較することはまだ難しいようです。折り紙を折る動作にも四角をどう折れば三角になるのか頭の中で操作することが必要になります。ここにNくんの難しさがあったのですね。
難しさが分かったので次はおしごとです!現在、Nくんとおしごとのひとつとして取り組んでいるのが「どこにはいるかな?ゲーム」です。丸や三角など色々な形の穴が空いている箱にブロックを落としていくゲームです。
トレーナーはまず、Nくんにブロックを触らずに見てもらって、どこの穴なら落とせるのか?を考えてもらいました。ブロックは立体になっているため、見る角度によって形も変化します。ただマッチングすれば良いということではなく、頭の中でブロックを思い浮かべ、頭の中で回転させることが必要なのです。
「うーん、どこかな・・・」悩んでいたNくんでしたが「あ!ここだ!」とひらめいたようです。苦手だった折り紙も、四角い折り紙をどう操作すれば三角形になるのかイメージが出来るようになったことで、折り紙に挑戦する意欲が湧いてきました。その調子だ!Nくん♪(花崎拳)

subaco kids
「満月に乗ってアンパンチ!」
「授業中の姿勢が悪い、と注意されるんです。」というお話をよく伺います。
朝礼時や授業中は立位や座位など一定の姿勢を保持し続けることが必要です。しかし、子どもたちの中にはそうした一定の姿勢をずっと保ち続けるということが難しい子もいます。その原因は「腹筋や背筋の筋力が弱いことにある」のでは?と思われるかもしれませんが、実はそれ以外にも大切なことがあります。
それは、身体の軸となる重心・正中線を捉えられるということです。その重心・正中線は様々な遊びの中で、感覚統合の基盤である前庭感覚や固有感覚等様々な感覚情報が脳の中で整理・統合されることによって徐々に形成されていきます。
Yくんは、正中線を捉えて片足立ちを持続することが難しく、立位での更衣がなかなか進みません。正中線を獲得するためには、平均台やバランスボールなどの不安定な場所で姿勢をコントロールする経験が大切だと言われています。
しかし、Yくんには高所や揺れ・傾きに対して不快感や怖さを感じてしまう「重力不安」という課題がありました。重力不安のある児童が揺れを伴う活動に積極的に取り組むためには、“安心して取り組める環境作り”が大切になります。
そこで今回は、“落ちてしまうかもしれないという怖さ”を軽減する環境として、天井からハンドルを吊しました。ハンドルを掴みバランスボールに乗っていると、突然目の前にバイキンマンが!!「意地悪するバイキンマンは、僕がやっつける!」と意気込むYくん。アンパンチをしようとして、ぐらっと身体が後ろへ倒れそうになりました。しかし、ハンドルを握りしめたYくんは、落ちないように正中線を捉えて元の位置に戻ることができました。
さあ、それいけっ!バイキンマンに向かってアンパンチ!!(北川千晶)

subaco bond
「よし、野鳥館制覇だぜ!!」
Kくんは小学校4年生の男の子です。subacoツアーで天王寺動物園へ行くことをいつも楽しみにしてくれています。しかしKくんには動物園で苦手な場所があります。
それは動物園の中にある野鳥園です。理由は過去に動画で見た「アオキジが大きな羽を広げている姿」や「ペリカンが口を大きく開けている姿」から鳥に噛まれるのではないかという考えが強くなり、以前行ったsubacoツアーでも野鳥館に入る事ができませんでした。怖さはあるのですが、「鳥を見たい!」という気持ちは強いようです。そんなKくんですがハトは怖くないのです。同じ鳥なのになぜでしょうか。
認知発達検査を行うと思考の柔軟性につまずきがあり、概念の理解や頭の中でイメージを豊かに作っていく段階ということが分かりました。ハトは怖い記憶にある「鳥」というカテゴリーの中に含まれず、「ハト」は「ハト」と考えていたのですね。
「鳥が見たい!」というKくんの気持ちに応えるために、「カルガモ探しゲーム」を考えました。その遊びに必要なのはKくんの大好きなお友達と、Kくんが怖くないと感じているハトと似ている鳥、「カルガモ」です。今回の動物園でも入るのを怖がっていましたが、お友達とする「カルガモ探しゲーム」は楽しみにしていたようです。
カルガモの写真を見て実際のカルガモを探します。「あっ!!カルガモいてた!!」と大きな声が野鳥館に響き渡っていました。「ほら!Kくん。君はもう野鳥館に入っているよ!」この「できた!」の経験からもっと野鳥館を探索出来るように一緒にがんばっていこうね。(横尾孝治)

subaco training
「鬼は外、福はHさん!?節分豆まき大会」
2月のイベントと言えば節分ですね!皆さんは恵方巻きや豆まきは厄を除け、無病息災を願う習わしとご存知ですか?
この冬は厳しい冷え込みで風邪やインフルエンザが全国的に流行しています。利用者様の中でも特にリーダーシップを発揮しているHさんは、日々通所している仲間達の健康を願い「盛り上がるようなイベントは無いか?」と、考えました。そこで提案してくださったのが節分の日に豆まき大会を実施する事でした。
trainingルームに突如現れた三体の鬼の面。皆で力を合わせて「鬼は〜外、福は〜内!」と順番に福豆を投げつけていきます。伝承上、「豆をまく」という動作には決まった定義というものは無く、一粒ずつ、一掴み、一度に全部など、投げ方は自由だそうです。
脳性麻痺による不随意運動が出現してしまい、福豆を「つまむ」事がむずかしいHさん。しかしsubacoで物を「掴む」練習を重ねてきた結果、福豆が沢山入った器を掴んで、豪快に振るう事が出来ました。「バラバラバラ・・・」と大豆が床に転がる音が部屋中に響き渡り、利用者様はみんな大笑い。スカッとした後はみんなで協力して床を清掃し、鬼や福おかめの面と共に記念撮影をしました。
Hさんが出してくださった提案でみんなが病気を吹き飛ばす、そんな前向きな気持ちにさせてくれる想い出深い一日でした。(中井光)

すばこだより 2月号(PDF版)
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