【2018年3月発行号】すばこだより「これで忘れないぞ!」他

季節は一巡り。桜前線と共に、subacoでも沢山の笑顔が咲き誇っています!
4月からは新学期!!新しい1日 ・ 新しい生活が始まります。これからどんな出会いが待っているか、今からとても楽しみですね。
subaco switch
「これで忘れないぞ!」
4月から小学1年生になるS君は、何事にも興味を示す好奇心旺盛な男の子です。目新しい玩具を見つけると一番に説明書を読みきり、すぐに遊び方やルールを習得します。そんなS君には、ちょっと困っていることがあります。
それは、お母さんと買い物へ出掛けた時などに「勝手に商品を触っちゃダメよ」と何度注意されても気になる商品があるとどうしても触ってしまうということです。言われていることは良く理解できているSくんです。ではなぜ同じことを繰り返してしまうのでしょうか??
自分の行動をコントロールするためには、目的の行動を妨げる衝動・感情を抑えたり、約束事を念頭に置きながら他のことに対処するといった衝動・感情や注意のコントロールが必要になります。今回おこなった注意機能検査から、Sくんは約束事を念頭に置きながら他のことに対処する注意機能に課題があることが分かってきました。この検査から、約束事を理解していても、次々に入ってくる情報によって約束事がかき消されてしまうと考えられます。
そこで今回は「ツイート作戦」をアプローチに取り入れました。「Sくん、忘れないように“かくにん、かくにん”って声に出すんだよ 」これまでは、直前にした約束もすぐに忘れてしまうS君でしたが、「“かくにん、かくにん”」と呟きながら行動するレッスンを重ねました。
今ではS君は「えーっと、これ使って良いですか?」と、自ら手にする前に確認をすることが出来るようになってきました!これで今まで以上にお買い物も楽しめるね ♪(有馬千恵)

subaco study
「ぼくはハンバーガーやさん」
「こんにちはー!」今日も元気いっぱいの声が聞こえてきました。Iくんは今年の4月に小学生になります。お話することが大好きなIくんは、スバコに来るといつもお家や保育園で遊んだ事をたくさん教えてくれます。
そんなIくんですが「ぼく”あした”動物園行った」「”さっき”スバコに来た時にボールで遊んだやん」など、随分前に経験した出来事を「さっき」「きのう」と言ったり、まだまだ先のことを「明日」と言ったり、時制をうまく使うことが難しいようです。
また、左右の理解にも曖昧さがあるIくん。このような位置や時間を表す言葉は、名詞や動詞のように〈事物や動作〉と〈言葉〉が1対1対応ではなく、何を軸・主体とするかによって示される物が変化する言葉です。Iくんは、抽象的な言葉に関しても大まかなイメージは持てているのですが、例えば、犬はゾウと比べると「小さい」けれど、アリと比べると「大きい」というように「〇〇と比べて…」という主軸を動かすことが難しいようです。
物と物・人と物・時間軸と出来事など、その場面の時空間的な位置関係を主体的に捉えて、文で表現することが出来るように、まずはIくんに自分の身体を軸として、右に広がる空間と左に広がる空間を認識してもらうことからレッスンをスタートすることにしました。
今回取り組んだお仕事は、『ハンバーガー屋さんになろう』です。Iくんにはお店屋さんになってもらい、目の前にやってきたお客さんのハンバーガーを作ってもらいます。「左から順番にパンの上にのせてね。」「左から順番にのせないとたまごがつぶれちゃうよ!」Iくんは「こっちからじゅんばんに…」と、一生懸命作っていきます。
無事に出来上がったハンバーガーをお客さんに渡すことができ得意顔♪最近では、空間や位置を表すことばが少しずつうまく使えるようになってきたIくんです。ことばの世界が広がると、お友達との会話がもっともっと楽しくなるね。もうすぐ1年生!友達いっぱいできるかな♪(竹村茉歩)

subaco kids
「目指せ!みんなのヒーロー!!」
A君は小学校に通う7歳の男の子です。ボール遊びが好きで、いつもお友達と一緒にボール遊びをしています。しかしA君は、投げられたボールをキャッチすることが難しく、学校で流行っているドッヂボールに中々入ることが出来ません。
「上手にボールをキャッチ出来れば、みんなとドッチボールが出来るのに … 」と寂しそうな A君…。キャッチがどのように難しいのか実際にキャッチボールをしてみると、キャッチする際にボールが顔の方へ当たってしまいました…。
タイミングよくキャッチするためには、動いているボールの軌道を目で追う「追視」をし、ボールの軌道に合わせて、キャッチの構えを準備する必要があります。A君は追視の検査結果から、速く動くものを目で追う滑動性追求眼球運動に難しさがあることが分かりました。
追視は、視覚情報に合わせて身体を動かす経験を積むことで獲得されると言われています。そこで、A君が楽しみながら追視が出来るように「かたかたスロープ」でアプローチをおこないました。これは右の写真のように、木板の上から方向を変えながら転がってくるビー玉を目で追いながら器でキャッチする活動です。
木板を置く角度を調整することが出来るため、ゆっくりとした速度から行いました。最初はカタカタと音を立てながら落ちてくるビー玉の動きを捉えることに苦戦していましたが、ついに…カラン♪ 綺麗なビー玉を一つゲット!このビー玉が入った音を聞きたくて何度もチャレンジをするA君。
今では、大きなボールのキャッチもできるようになりました。A君!ドッヂボールでみんなのヒーローになれる日も近いね!(梅田瑞季)

subaco bond
「手をつないで!ぴょん!」
皆さんはコミュニケーションを取る時、どのようなことに気を付けていますか?Yさんは3歳の女の子。subaco bondに通いはじめ、一人でトランポリンが跳べるようになりました。しかし、一度跳び始めると一人で黙々と跳んでいて「一緒にしよ!」など他者へ要求をしたり、遊びを共有する姿は見られず、一人の世界になってしまいます。
3歳頃になると、自我がはっきりしてくると共に他児との関わりが多くなる時期と言われていまが、Yさんは他の場面でも一人遊びが多く、視線が合うことも少ないのです。また、型はめの活動の中から、Yさんは形の弁別は出来ていますが、相互作用の中で「できた!」「あってる?」などの他者と共有をはかる三項関係に課題があることが分かりました。
三項関係の獲得には、相手と視線を合わせることや、意図を理解することが大切になってきます。三項関係を獲得することで、今後の発達過程の中にある「他者の心を理解する」ということにも繋がっていきます。今回アプローチでは「シーツハンモック」という、Yさんの好きな感覚遊びを取り入れました。「視線を合わせることで遊びが始まる」ということを狙いにおき、アプローチを進めました。
今では、ユラユラと好きな感覚が止まるとYさんの方から「もう一回!」と視線で合図を送ってくれるようになってきました。視線の合う回数が増えることで、トランポリンの活動中もトレーナーの手を取り、手を繋いで一つの活動を一緒に共有できるようになりました。一緒に遊ぶってたのしいね (^^♪ Yさん!(前嶋果菜)

subaco training
「Time is money」
先日、障がい児・者に関連する法律や福祉の制度について学ぶ内部研修「subaco law school」にHさんが発表者として出席しました。
Hさんは重度の身体障がいを抱えており、衣・食・住の様々な場面でヘルパーさんの手助けを得て、10年以上一人暮らしをされています。「生活の豊かさ」について発表をすることになったHさんは、重度訪問介護という福祉サービスを受けられる時間について話して下さいました。
昨年Hさんに支給されていた支援時間数は301時間。subaco trainingの利用時間を除いても、1日の内10時間もの間、飲まず食わずでトイレにも行けない、雨風が強くても家に帰れないなど、ハンディを抱えるHさんにとって大変過酷な環境だったそうです。ショートステイや移動支援等、重度訪問介護以外のサービスも利用して生活を工夫していたHさん。生活をより良くするため行政に何度も呼び掛け、時間数を増やしてもらえるよう闘い続けてきました。
その結果、昨年10月からは支給時間数が見直され、外出先でのトイレや食事、細部まで出来なかった清掃など、様々な支援が受けられるようになり、多くの豊かさを感じられるようになってきています。Hさんから「私たちのような人がより良い生活を送るにはどうしたら良いですか?」質問を受けた拳トレーナーは「まずは福祉制度について、そのサービスを受けるHさんの生活について、知るという事がまず大切なんだと思います。 」と答えていました。
今回の研修は、障がいを抱える人たちの生活像について知る、とても良い機会だったと実感しました。社会の荒波の中で世の光となっているHさん!! subacoで働く私たちにとっても、いつも力強い指標になってくださっています。(中井光)

すばこだより 3月発行号(PDF版)
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