【2018年4月発行号】すばこだより「最後まででーきた!」他

ポカポカと心地よい春の陽射しも少しずつ暑さを帯びてきましたね!
期待と不安が入り混じる新年度が始まりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。今年度もsubacoは皆様の「出来た」に沢山出会えるよう全力で取り組んでいきます!
subaco switch
「最後まででーきた!」
H君は小学1年生の男の子です。好奇心旺盛で、周りのお友だちに「何してるの?」と声をかけすぐに遊びの輪に入っていきます。そんなH君には少し困っている事があります。
それは帰り支度をする時に、他のことが気になって最後までやり遂げることが難しいということです。トレーナーが声をかけると「あっ!!そうだった」と帰りの支度を再開するのですが、またすぐに他のことに気を取られてしまいます。何度も途中で他のことに気を取られてしまうために、その都度周囲からの声かけが必要となり、また忘れ物も多くなってしまいます。
最後まで支度をやり遂げることがなぜ難しいのかということについて調べるために、今回は注意機能検査を行いました。この検査の結果から「反応の抑制」と呼ばれる“不要な刺激に対する反応を抑え、必要なものだけに注意を向ける働き”に難しさがあるということが分かりました。
そこで、Hくんとこんな作戦を考えました。「帰る支度の時、もしお友だちが楽しそうに遊んでいたらどうする?」「“今から僕は支度をするから遊ばないよ”って言う!」「最後まで支度をやり切れたらご褒美がもらえるからね」そう聞いたHくんは大張り切りです。「じゃあ僕支度を始めるね!」大きな声で宣言した後、「…気にしない、気にしない」と小さな声で呟きながら他のお友だちのことを横目に最後まで支度をやり切りました!!実は、この小さな「つぶやき」は、不要な刺激を抑制し集中力を高める働きをしていたのです。
「やったー!終わった!」と大きな声で喜ぶHくん。これで忘れ物もなくなるね!(宇住庵由里菜)

subaco study
「真実はひとつ!」
Aくんは、元気いっぱいな小学4年生の男の子。subaco studyにくるといつも流行りのギャグや歌でみんなを笑顔にさせてくれます。そんなAくんなのですが、少し苦手なことが…。それは「漢字」を書くことです。
Aくんの漢字テストを見てみると、線が一本多かったり、今度は少なかったり…ん〜おしい!という印象です。Aくん自身も、「覚えられへんねん。」と自信をなくしてしまっているようです。どうやったら少しでも漢字と仲良くなれるのか…。一緒に調べていくうちに、Aくんは、全体を大まかに捉えることは得意ですが、細部に目を向け、部分の違いを捉えることに難しさがあることがわかってきました。
そんなAくんと現在取り組んでいるのが「犯人を探せ!」というおしごとです。犯人となる「絵や文字」と見比べて、犯人探しを行います。正確さとスピードが求められるこのおしごと。初めのうちは、少しの違いに気がつけずに、違うモノを捕まえてしまうこともあったAくんでしたが、徐々に 正確に素早くホンモノかニセモノか?を見極められるようになってきて、「任せろ!」と頼もしいAくんです。
最近では「先生〜!こんな字知ってる?」と難しい漢字を教えてくれる自信にあふれたAくんの顔が今日も眩しく輝いています♪(原敬美)
subaco kids
「今助けるから、待っててね!」
Sくんは身体を動かすことが大好きな6歳の男の子です。Sくんは手先を使った細かい作業が苦手なのですが、工作の時間も楽しく参加出来るように、【ハサミで丸を切る】という目標に取り組んでいます。
Sくんのハサミを使う様子を観察すると、腕に余分な力が入って肩がぎゅっと上がってしまったり、ゆっくりと少しずつ切り進める事が難しく切り取り線から大きくはみ出して切ってしまう様子がありました。今回はそんなSくんの目標達成へ向けた取り組みをご紹介します。
手先を使った微細運動を上手に行うためには、まずは粗大な運動・肩と肘、手首など各関節の協調的な分離運動の発達が必要になるのですが、ハサミを操作するときに肩が上がってしまうのはこの分離運動がうまく出来ていないためであると考えられます。その分離運動の発達を促すためには、まずは肩や肘の筋力を高めることが効果的だと言われています。
そこで取り組んだのが「ぐらぐらレスキュー隊」です。この活動は、前方で助けを求めているぬいぐるみたちのため縄を引っ張りながら進み、助け出すというストーリーです。縄を引くために肩や肘にグッと力を入れる運動を行うことで、分離運動の発達を促すことができるのです。たくさんのお友達を救出していく中で、肩や肘の分離運動ができるようになってきたSくん。
最近では線に沿ってハサミを操作できるようになって来ました。次は紙に閉じ込められたキャラクターをハサミで救出してあげよう♪(松野真平)

subaco bond
「はーい!タッチ!」
4月から1年生になったDくん。新しい環境で色々な経験を積む第一歩ですね!subaco bondの利用開始間もない頃は、みんなで行う挨拶の時間に自分の名前が呼ばれるまでトランポリンで跳ねたり、先に次の活動部屋に行こうとしたりと、お友達に対して関心を示す行動はあまり見られていませんでした。
検査を行なうと、人と相互的に関わることや、同じ事物を見たり共有したりする共同注意の難しさがあるということが分かりました。今回はDくんが大好きなボール遊びに着目し、取り組みを考えました。名付けて「お名前キャッチボール」!
人に投げて遊ぶ段階にまで至っていなかったDくんですが、人への意識を高めることを目的に、相手の名前を呼んでから投げられるように環境設定し取り組みました。取り組みを通して“お友達に渡せた!”“お友達に呼んでもらった!”という喜びが積み重なるにつれ、笑顔でキャッチボールを楽しむ姿が見られるようになりました。最近は挨拶の時間もお友達を見ながら「はーい!」「タッチ!」とやりとりが増えたDくん!
今日はどんな遊びがはじまるのかな♪挨拶からはじまるお友達との遊びの中からたくさんの「できた!」を発見していこうね。(前嶋果菜)

subaco training
「椅子の上にも3年」
皆さんは1日の内、何時間位座って活動されていますか?また、その座っている姿勢の内、背もたれや肘置きの無い椅子に座っている時間はどれ位でしょうか?
私たちの暮らす日本は世界の中で最も「座位での活動時間」が多い国だそうです。朝目覚めてから就寝するまでの間、実に半分以上の時間を座って生活しているそうです。長時間座っている事で健康に関する悪影響もあると言われていますが、subacoトレーニングには「椅子に長く座れる事も豊かさ」だと考える方がいます。
Hさんは脳性麻痺による運動機能障がいで車椅子に座って活動していますが、体幹の不安定さがあります。背もたれや手すりに大きく寄りかかりながら、身の回りの動作を自立させていますが、手すりの無い洋式トイレや他の椅子に移乗して活動を行う事は出来ませんでした。
「自宅以外でもトイレが出来るようになりたい」「車椅子で乗り入れられないような場所では椅子に座って活動出来るようになりたい」そんな想いから丸椅子に5分間座り続けるという目標にチャレンジしました。あえて不安定なバランスボールの上に座って立ち直り反射を促したり、足の裏で踏ん張る練習を重ねた結果、5分以上座位保持が出来るようになりました。
安楽な姿勢が継続できるようになったことで、便通まで改善され今ではsubacoのトイレでも用を足す事が出来るようになりました。昔のようにBarの椅子に座ってお酒を楽しみたい、そんなお洒落な目標を持っているHさん。素敵な余暇活動を送れるようにこれからも色々な椅子に座っていきましょう!(中井光)

すばこだより 4月発行号(PDF版)
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