【2018年9月号】すばこだより「いざ、鬼退治!!」他

涼しい風に乗って秋を知らせにやってくる赤とんぼ。「ホラッ 秋はもう、すぐそこまで来てるよっ!」と教えてくれるように、私たちも次のステージへ歩み続ける皆さんを応援しています。
subaco switch
「いざ、鬼退治!!」
Sくんは4歳の男の子です。どんなことでも積極的に取り組むSくんですが、一回失敗してしまうと悔しい気持ちを抑えることができず、すぐにその活動を止めてしまいます。今回は、そんなSくんが悔しい気持ちを抑えて何度もチャレンジができる様になるためにsubaco switch谷町で取り組んでいる活動を1つご紹介したいと思います。

むかしむかし、あるところに、桃から生まれた桃太郎という男の子がいました。桃太郎は、村に来て悪いことをしてみんなを困らせている鬼を退治するため、遠い遠い海の果てにある鬼ヶ島に向けて旅立つことにしました。しかし、鬼は桃太郎の力では退治できそうにありません。
そこで桃太郎は船に乗って「いぬ」「さる」「きじ」の仲間を集めつつ、少しずつ鬼退治に向かうことにしました。鬼ヶ島に向かう途中、海は岩石に囲まれていました。ぶつかってしまうと船は壊れて引き返さなければ溺れてしまいます。
そーっとそーっと、海を渡って仲間を集めて、「鬼ヶ島を目指そう!」
「いざ、鬼退治!!」 勢いよく海に出た桃太郎ですが・・・。
「ドンッ!」
岩石に当たってしまいました。
「あっ!もう少しで犬のところまでいけたのに!」と上手くいかない時には悔しい気持ちが溢れてきます。しかし、桃太郎役のSくん!ここで止めてしまうと鬼退治に行くことは出来ません。そんな時には『深呼吸』をします!!
実は、深呼吸をすると副交感神経が優位に働き、ストレスが緩和すると言われているのです。深呼吸をしながら、悔しい気持ち、早く鬼のところへ行きたい気持ち、逸る気持ちを抑えつつ、岩石を避けて桃太郎は海をどんどん進みます。そしてついに桃太郎は仲間を集めることができました!
よし、最後は仲間と一緒に、鬼との決戦だ!!(松野 真平)

subaco study
「本当の魔法は…」
Mさんはとっても元気な小学3年生の女の子。魔法やお化けが大好きで、subaco studyでのレッスンが終わると魔界のプリンセスに変身しトレーナーと一緒に、ごっこ遊びを楽しんでいます。(トレーナーはプリンセスの執事役です。)
そんなMさんですが、困っていることがあるようです。Mさんは、計算問題が苦手で、よく計算を間違えてしまい、計算プリントのやり直しにも時間がかかってしまうので、うんざりしてしまうこともしばしば・・・。
そこで、Mさんの間違いの傾向を確認して見ると「16-7=19」と答えていたり、「48-9=49」と書いてしまっていたりと、繰り下がりの計算を忘れてしまっているようなのです。なぜ繰り下がりをいつも忘れてしまうのか?
原因を確かめるため、トレーナーは頭の中に情報をとどめておく力である「ワーキングメモリ」について検査を行いました。その結果Mさんは頭の中にたくさんの情報をとどめておくことが苦手で、計算の途中で「繰り下がりがある計算だ」ということを忘れてしまっている事が分かってきました。
そんなMさんと行ったトレーニングが「チャンキング」です。チャンキングとは複数の情報を処理する際に、まとめて考える力のことをいいます。【画像1】に描かれている◯の数を数えてみてください。

頭の中で無意識に6と2にまとめてから数えていたのではないでしょうか?
頭の中で行われているこのまとめ作業こそがチャンキングであり、一度に処理しなければならない情報の量を減らすことができます。Mさんには、沢山の◯を効率よく数えるために同じ数ずつまとめたり、同じ色でまとめる練習を行ってもらいました。この練習を通じて、現在はMさんの計算ミスは少しずつ減ってきたようです。
魔界のプリンセスは魔法なんて使っていません。彼女の努力の賜物です。
本当の魔法は自分の中にあるんだよって、彼女が気づくのはもう少し先のお話…(重松 大介)
subaco kids
「kidsサマーフェスチバル」
今年の夏休みは良い思い出がたくさん作れましたか??夏は花火や海水浴、お祭りなど素敵な行事が沢山あったのではないでしょうか ♫ subaco kids谷町でも夏にちなんだプログラムとして『夏祭り』を行いました。スーパーボールすくい・ヨーヨー釣り・射的・くじ引きなど、どの活動もたくさんの児童が参加し楽しんでくれました。今回はその1つ「射的」の活動を少しご紹介したいと思います。

今回使ったのは『ロケットランチャー』と言う空気砲です。写真のように両手で銃を持ち、ポンプみたいに空気を押し出すことで球が勢いよく飛んで行きます。しかし、上手に球を飛ばすためには【両側運動協調】という機能が必要になってきます。
両側運動協調とは、1つのことに対して両側の手足をそれぞれ協調させて使うことです。例えば定規を使用する時には、左手で定規を押さえ、右手でペンを持って線を引きますよね。この動作の中にも、左手は支持する役割、右手はペンを持ちながら動かす役割を担い、両側の動きをうまく協調させる事で線が引けるのです。
この機能に課題があると、食事場面や紐を結ぶ場面など日常生活の動作の中で難しさを感じる場合があります。両側にそれぞれ役割を持した活動を沢山経験することで両側運動協調は発達されると言われています。みんな的を狙うために、何度も両手を使い球を発射してくれました。
このように遊びを通して機能の向上を目的とした活動を10月も行います!是非ご参加下さい!(梅田瑞季)

subaco bond
「あっ!せんせいや!」
今回は「先生といっしょにシャボン玉をする」という目標を見事に達成した4歳の男の子Aくんの自慢話しです!!
コミュニケーションの中でよく使われるワードの中に「いっしょに」という言葉がありますよね。この「いっしょに」という言葉はどのような意味や行動を持ち、どのような機能が必要になってくるのでしょうか?
Aくんの発達から考えると、愛着対象となる人(他者)との関係性の中で共同注意行動が必要になってくることが分かってきました。この共同注意行動の発達には【<自己-他者>と<自己-もの>】という二つを結ぶ関係があり、そのことを二項関係といいます。その発達から <自己-もの-他者> という三項関係に段階を踏んでいきます。一般的な発達過程では、<自己-他者>という関係性から成長していくと言われているのですが、自閉症スペクトラム症の場合は<自己-もの>からの成長が見られると言われています。
今回Aくんは、<自己-他者>という二項関係にアプローチを行い見事に目標達成したのですが、その後のAくんもすごいんです!!subaco bondのエレベーター前で会った時「先生、車直してくるね。」と言葉を掛けると、目を見て「バイバイ!」と言って手を振ってくれたのです。また、お母様の話では保育園でもみんなの輪の中に入りトランポリンを跳べるようにもなったと聞きました。
一つの目標達成から人を見るという力がついてきたAくんです。今後のAくんの成長をお母さんと喜べることが何よりの幸せです。
毎日こんなうれしいニュースだったらいいのにな♪(横尾 孝治)

subaco training
「虹色アーティスト」
みなさんは「スクラッチアート」をご存知でしようか??
スクラッチアートとは、今日本でもブームとなっている「新しいお絵かき」です。駄菓子や懸賞の当たりくじやプリペイドカード等、コインで削ると下地が見えてくる印刷物を知っている方は多いと思います。
スクラッチアートは、一見何も描かれていない黒い紙ですが、スクラッチ面をペンやつまようじで削ると下地に描かれている色が浮き上がって見えてくるのです!!最近では大人の本格お絵かきとして人気を呼び、本屋さんでもスクラッチアート専用コーナーを見かけるようにもなってきました。
そんな芸術の秋に相応しい流行がsubaco trainingにも広がっています。最近トレーナーや他の利用者さんの似顔絵を描く事にハマっているWさん。身体の部位を知覚して、ボディイメージを獲得出来るようになってきた事で、目・鼻・口・輪郭等、似顔絵を書けるようになってきています。
しかしペンを握る力、運筆する時の筆圧等が弱いため、描こうとする形が不安定で崩れやすいのです。そこで今回は、Wさんにスクラッチペーパーを使って似顔絵を描いて貰うことにしました。最初は弱い筆圧で「あれ?絵が描けない…」と戸惑っている様子のWさんでしたが、トレーナーが手を添えて力を加えるとカリカリっと、下地が見えてきました。
コツを掴んだWさんはそこからあっという間に似顔絵を完成させていました。力を加える事が難しかったWさんでしたが、スクラッチペーパーを使用したことで、楽しみながら力の調節をできるようになってきました。言葉を話す事にハンディありますが、ジェスチャーやアート等、多彩なコミュニケーションを駆使するWさんです。
明日もカリカリ、Let’s drawing !!(栄本侑記)

すばこだより 9月発行号(PDF版)
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