【2017年6月号】すばこだより「始まりの合図 〜タイマー作戦〜」他
今年は晴れの日続きで遅れてやってきた梅雨に季節を感じてホッと安心しました。そしていよいよ7月!本格的に夏に突入です。イベントが盛りだくさんな夏休みですが暑さにも負けないよう元気良くレッスンしていきましょう!
switch
「始まりの合図 〜タイマー作戦〜」
Y君は保育園に通う5歳の男の子です。Y君は数字が好きで、タイマーで遊んだり、対戦ゲームに出てくるキャラクターの戦闘値について教えてくれます。そんなY君には、苦手なことがあります。それは、今している活動から次の活動へ行動を移すことです。
好きな遊びをしているY君に、「今から◯◯するよ。」と声をかけると、「嫌だー!!」と言って逃げてしまいます。活動がY君の好きな内容だったら出来るのですが、興味がないこととなると、いつまでも好きな遊びを続けてしまいます。
人の理性や思考・判断を司っている前頭葉の大きな働きに「実行機能」と呼ばれるものがあります。実行機能は、目標のために自分の行動や感情をコントロールする役割を担っています。実行機能の働きのひとつにシフティングと呼ばれる課題から課題へ切り替える能力があるのですが、Y君はこのシフティングに難しさがあるようです。
そこで今回switchではY君が好きなタイマーを取り入れてアプローチを行いました。「Y君、今日は◯◯するけど、いつする?」とタイマーを手渡します。すると、「10分たったら始める!」と言って得意気にタイマーをセットしてくれました。「じゃあ、タイマーが鳴ったら始めようね!」と、トレーナーと約束すると、タイマーが鳴ったら Y君は自分から遊びをやめて次の活動を始めることができたのです。好きなタイマーを使って、自分が決めた時間を守ることを楽しむ中で、Y君はこれまで難しかった切り替えができるようになりました。

今ではY君は、声をかけられるとすぐに次の活動に移ることができるようになってきています。タイマーを使って切り替えができたという経験が、タイマーを使わなくてもうまく切り替えができることに繋がりだしたというわけですね。始まりを知らせるタイマーが、Y君の中で美しい鐘の音のように鳴り響けば良いですね。(重松)
training
「次のステップ」
車いすで過ごすことの多いIさんは立位保持のトレーニングを続け、今では5分以上立位保持することが出来るようになりました。すると、Iさんは歯磨きを「みんなと同じように立ってしてみたい」と話され、そこからIさんのチャレンジが始まりました。
Iさんが立って歯を磨いてみると上肢の動きによりバランスを崩してしまったり、コップを持とうと手を伸ばした時に前に倒れそうになったりしてしまいました。立位保持に自信を持っていたIさんもこれには悔しそうでした。そこでトレーナーはIさんが「立位で歯磨きをする」という目標を達成できるようIさんと一緒にトレーニングに励みました。
トレーニングメニューは体幹を鍛えることを中心に様々なトレーニングを行いましたが、その中でも特に繰り返し行ったのは、「空中書字当てゲーム」です。それは、立って空中に書いた文字を当ててもらうというゲームです。文字を書く時には上肢を色んな方向に動かさないといけません。初めは上肢を動かすと体幹が揺れ転けそうになるため小さな文字しか書くことが出来ず書いた文字が解答者に伝わりませんでしたが、回数を重ねるごとに文字を書いても立位保持することができ上肢を大きく動かして空中に文字を書くことが出来るようになりました。そして、立位で歯磨きすることに再度チャレンジしてみると見事に立って歯を磨くことが出来ました。
「立位で歯磨きをする」目標達成の表彰状も「立って受け取りたい」と話され、立って両手で表彰状を受け取り一礼することも出来ました。普段は車いすで過ごすことが多いIさんですが、立位でどのような日常生活動作や社会参加をしていくのか楽しみですね。(青木)

kids
「手押し車をやってみよう!」
皆さんは手押し車をしたことはありますか?手押し車は2人1組で行う活動で、足を相手に支えてもらうことで上肢のみで身体を支えて進んでいく活動です。kidsでは、腹筋や背筋などの体幹筋だけでなく肩甲帯と呼ばれる肩周囲の安定性を高める目的として、縄跳びの縄を回すことが難しい児童やボールを思ったところへ投げることが難しい児童と一緒に取り組むことがあります。今回は、その手押し車の方法についてご紹介します。
<Before>
右図のように子どもの足首を支えるという方法で行われることが多いのではないかと思います。しかし、これでは腹筋と背筋、股関節周囲筋などへの負荷が高くなります。そのため、体幹の筋力に課題がある児童や、上肢の支持性に課題がある児童にとっては身体を床に対して平行に保つことが難しく、右図のように臀部が下がったり、反対に上がってしまう代償が生じやすくなります。代償動作が生じてしまうと、せっかく頑張ってもその効果が低くなってしまいます。ではどのようにするといいのでしょうか?

<After>
右図のように足首ではなく、大腿部を支えます。そうすることにより、児童自身が体幹筋で姿勢を保持する際の負荷を軽減することができます。また、下肢の高さを肩と同じにするように意識して支えてあげると身体を床と平行に保ちやすくなります。

また、手押し車をすると下を向きやすくなるのですが、顔をあげることを意識することで肩甲帯に力が入りやすくなります。そのため、前方に興味を引く物を置いてそれを目ゴールにして進んでいくという活動を行うといいと思います。(北川)
study
「書けるって楽しいな♪」
Kさんは5歳の女の子。カワイイものが大好きで、いつもオシャレ。おしゃべりもとっても大好きなKさんは、お家でのお話や幼稚園でお友達と遊んだこと、今日のファッションポイントなど、いつもスタッフに沢山のことを教えてくれます。
そんなKさんですが、お絵かきの時間になった途端、顔が曇ってしまいます。自信がない様子でなかなかペンを持とうとはしません。隣で絵を書いているトレーナーの様子を見て、やっとペンを動かしはじめたKさん。描いた絵を見てみると、◯がたくさんです。「お皿!」とKさんは教えてくれました。たくさんのお皿を描いてくれたKさんですが、空っぽのお皿を眺めるだけでなかなかペンが進みません。どうやら︎お皿の上に乗せる食べ物が描けずいる様子でした。
そこで、トレーナーはKさんに△や□などいろんな形のテンプレートを渡しました。テンプレートをなぞってみると、「三角おにぎり」や「四角いパン」、「ひし形のおもち」などを次々描いて、お皿の上はあっという間に山盛りに!Kさんに誘ってもらい、ピクニックがスタートしました♪自分で作ったおにぎりは格別!Kさんに笑顔が戻りました(^0^)描けると楽しい!

描きたい気持ちが膨らんだKさん。そんなKさんの大きな目標は、自分の名前が書けるようになることです。
でも、その前に三角をフリーハンドで描けるようにチャレンジです。ペンを持つ手が重たかったKさんも、描くのが楽しいってわかったから、これからはがんばれるね! 描けたらもっと楽しいよ!最近では「あ!これはママの字だ!」、「これは、Kちゃんの『か』だ!」などひらがな文字も少しずつ覚えてきているようです。名前が書けるようになることを目指してがんばろうね♪(原)
お知らせ
7月17日は祝日プログラムを予定しています。今月も各事業所楽しいプログラム盛りだくさんでお待ちしています。皆様ぜひお越し下さい。
すばこだより6月号(PDF版)