大阪市天王寺区・西区の
児童発達支援・生活介護「スバコ」

自立度


 

一人でできたら

『できた!』なのかい?

 

一人だけでできることなんてあるのかい?

 

自力と自立の意味は違うんだ!

限定的な自立もある

部分的な自立もある

 

全介助でも

自立しているボクがいる

————————————————————

ADLという医学用語があります

Activities of Daily Living の頭文字の略称であり

日本語では日常生活活動(動作)と訳されます

1945年にニューヨークの医師 Deverさんと

理学療法士 Brownさんによって提起された概念語です

 

どんな概念なのでしょう?

 

アメリカでADLが生まれた約30年後の1976年

日本リハビリテーション 医学会評価基準委員会がADLの概念を国内で以下の通り説明しています

『ADL は、ひとりの人間が独立して生活するために行う基本的な、しかも各人ともに共通に毎日繰り返される一連の身体動作群をいう。この動作群は、食事、排泄などの目的をもった各作業(目的動作)に分類され、各作業はさらにその目的を実施するための細目動作に分類される。リハビリテーションの過程や、ゴール決定にあたって、これらの動作は健常者と量的、質的に比較され記録される。』

 

障がいに馴染みがなければピンとこない説明のように思います

 

1945年という時代に時を戻してみると

1945年以前は医学の範囲が

『日常生活(daily living)』まで広がっていなかった・・・

医学が相手にしていたのは『生きている( living)』までの範囲だった・・・

という背景が見えてくるのかも知れません

 

 

第二次世界大戦後、医療の課題はシフトします

障がい者の人口は戦争によって爆発的に急増します

 

戦傷者に対する医療の目的は生命機能の回復から

日常生活の再建へと拡大します

 

そして『Rehabilitation』の概念が誕生します

 

その新たな概念に基づき

医学的な評価(検査)が誕生します

 

まず1960年代初めにKatzという医師が退院困難な患者さんのADLを調査します

Katzさんは6つの日常生活動作に対して

『自立』に相対する関係を『介助』と位置づけ

Katz indexというAからGまでの7段階の自立指標を設定しました

 

その後、1965年にBarthelさんはADLを自立・監視・部分介助・全介助に区分し

Barthel indexという100点満点での採点式評価法を開発しました

監視(見守り)が自立レベルの段階に加わったことは新たな見識でした

 

そして1990年にアメリカのGrangerさんがFunctional Independence Measure(FIM)

日本語訳『機能的自立度評価法』というADLの評価法を開発しました

 

ここで注目すべきことは

ADLの評価がFunctional Independenceという表現に変わったこと

対象年齢が成人のみでなく7歳にまで引き下げられたことだと思います

 

評価されるADL項目や判定の段階が増えたという変化もありますが

それよりもIndependence(自立・独立)という状態が

Function(働き)に結びついているのだと表現したことが革新的でした

 

 

今は2020年

FIMの名の通り自立度合いは人の結果ではなく

機能的なものであるという考えを

私たちは福祉の現場で受け継ぎ

大切にしています

 

 

subaco trainingには

マスクを自力で取り付けられないメンバーさんがいます

マスクを装着すれば唾液が溢れてしまいます

 

花粉症で止まらない鼻水をかむ動作では

支援者の介助によって自立されています

 

現在は利き側左上肢で筆を運び

桜の描画に取り組まれています

筆を掴んでいるのは指でなく手首です

その手がありました♬

 

脳性麻痺という障がいがあり

手指の巧緻な運動が困難で

指でティッシュが掴めないため

介助が機能的に必要です

そんな介助もご本人の自立生活に機能できるようになったならば

指ではない部位を使って

いつもと10倍以上の時間をかけて

紙を掴んで鼻をかんでみたいと

今日もここで励まれています

 

 

今年はお花見に行くことの出来ない春でした

そんな春でもご本人さんの笑顔は

今日も満開です

 

 

 


H氏画 「spring〜花と風〜」