【2017年9月号】すばこだより 「それゆけ!かくれるくん!」他

暦の上ではもう秋だというのにまだまだ暑い日が続いていますね。暑さの疲れから体調を崩してしまわないようにお気をつけてお過ごし下さい♪
subaco switch
「それゆけ!かくれるくん!」
下の写真は小学6年生のI君に、お手本を見ながら「檸檬」という字を繰り返し書いてもらったものです。線の数が足りなかったり、消しゴムで消さずに上から書き直しているような様子が分かります。もし、お子様がこのようなミスをしていたらどのように感じますか?「そそっかしいな…」「もっと丁寧に書けばいいのに…」このように考える保護者の方もいらっしゃるかもしれません。

実は、本人は丁寧に取り組んでいるつもりでも、注意コントロールの難しさから、書き間違いが生じてしまうということだってあるのです。I君は、学習に取り組んでいる最中に注意があちこちに向いてしまって、ドリルやプリントでこのような書き間違いをしてしまいます。そこで今回用意したのがこの「かくれるくん」です。

【写真1】のように、繰り返し練習をしていると、どんどん視覚情報が多くなり、注意をコントロールすることが難しくなって来ます。

【写真2】のように、かくれるくんを使うことで、視覚情報を限定し、注意を向けるべき対象を減らすことができます。I君はこれを使って、ひとつひとつ確実に間違えずに書くという練習を行いました。

かくれるくんを使って練習しているうちに、I君は漢字を学習する際に、余計な情報を手や紙で隠しながら書くということができるようになりました。I君は、自分で注意をコントロールするスキルを身につけることができたんですね。
「こうやったら上手くいくんだ。」という自己に対する認識の高まりが、自分から「やってみよう」と行動する一歩になります。subaco switchでのひとつひとつの「できた!」を大切に、いろいろなことにチャレンジしてね。I君!(重松)
subaco study
「『あ』の秘密を探れ!」
夏の暑さを吹き飛ばすほどうれしい出来事がありました。なんとRくんが『自分の名前をひらがなで書く』という目標を見事達成したのです。
Rくんは、新しいものが大好きで、好奇心旺盛な男の子。小学生になって名前を書く機会が増えましたが、特に苦戦していたのが「あ」です。実際に書いてもらうと、どうしても「あ」は「お」の「`」がない文字になってしまいます。
そこでトレーナーは、線や点との距離感や文字の形を把握するための機能である『空間認知』に課題があるのではないかと考え、見え方の検査であるフロスティッグ視知覚検査を実施しました。すると、線同士の位置関係を捉えることに課題がありそうだということが分かりました。
「あ」のように複雑に線が交わっている文字を見たときに、文字を構成する線の傾きや角度といったモダリティの抽出がRくんにとって難しかったのかもしれません。Rくんが「あ」を書けるようになるためにトレーナーが考えたおしごとは、「『あ』のひみつをさぐれ!」です。

粘土のような砂で立体的に「あ」の形を作っていき、どんな形であるかを把握していくというおしごとです。実際にひらがなを作って触れることで、空間における線の位置関係を意識してもらうことがねらいです。「あ!ここにも穴あいてた!」
実際に触れたことで、空間に気付けたようです。砂で作って、紙に鉛筆で書いて…、Rくんはついに「あ」と正しく書けるようになりました。次の週になり、Rくんに会うと、『おなまえかいたろかー!』と言って自分から紙と鉛筆を取り出し、キラキラした笑顔でトレーナーに書いた文字を見せてくれました。
おめでとう!もうお名前はばっちりだね!次はどのひらがなにチャレンジしようかな。(竹村)

subaco kids
「空飛ぶ風船を捕まえろ!」
子供達にも大人気のトランポリンは、身体が揺れたりぐるぐる回ったりする時に感じる感覚(前庭覚)やぐっと足で踏ん張る時に筋や関節で感じる感覚(固有覚)を取り入れられる教具でもあります。今回はトランポリンを活かしたsubaco kidsの活動をご紹介します。
トランポリンに乗り、天井から吊るした風船をジャンプしてタッチする活動です。トランポリンの特性を利用して固有覚・前庭覚を感じられるだけでなく、風船を見てどれくらいの力で跳んだら上手にタッチできるのかを考えることで、力の調節や目と手の協応を促すことができます。上手に風船にタッチできるようになれば、さらにステップアップ。写真のように足元に印を付け、そこから出ないように跳びながら風船にタッチをします。

風船を見るために視線を上げているので、印から出ずに跳び続けるためには、より正確に固有覚や前庭覚をとらえる必要があります。印から出たときは、「あっ!」と声をかけて本人が自分で気付けるように、聴覚など他の感覚で代償しながら力加減の調整をする経験を積むことも大切です。
他にも、バイキンマンや仮面ライダーなど子どもが好きなキャラクターの写真を風船に貼ったり、敵の写真を貼ってやっつけるストーリーを加えることでより楽しく行うことができます。
トランポリンが無い場合は、バランスディスク(下の写真)という教具を用いることで行うことが出来ます。ご興味のある方はインターネット通販でも1000円前後で購入出来ますのでチェックしてみて下さい!(梅田)

subaco bond
「伝えたよ!もう一回やって!」
8月から開所となったsubaco bond!!早くも1か月が経とうとしています。元気な声が響き渡る毎日の一部分を紹介したいと思います。
みなさんは「もう一回!」という気持ちをどのような時に使いますか?
私は、うれしかった時や、楽しかった時でしょうか。5歳児のAくんは、身体を動かして遊ぶのが大好きな男の子です。クルクルとブランコに乗っては回転を繰り返しています。どうやら、一人遊びを好んでしているようです。
発達の段階を追ってみていくと、2歳頃に同じ年頃の子どもに興味を持ち始め、見立て遊びが始まります。その後、経験を重ねて、3歳頃にお友達と遊び始め、他者とのやり取りが増え始めます。そのことから、Aくんが他者に対して興味や関心を持てることで集団活動での遊びの参加が広がるのではと考えました。
PEP-3の検査では、一つの項目の中からジャスチャーでやりたいことを伝えようとする発達の芽生えが見られました。そこで、アプローチでは、はじめと終わりを解りやすくする為にスクリプト、いわゆる起承転結を活動の中に作り、その中に私の存在を意識してもらえるように、目と目が合ったら、遊びをスタートするというルールを作りました。
自分以外の誰かを介して遊ぶということを続けていくうちに目が合う頻度が増え、ブロックのフタを開けてとジェスチャーで伝えられたり、作った物を一緒に眺めるということもできるようになりました。そして、今では大好きなブランコをクルクルと回してもらい、途中ピタッと止めてもらう遊びの中で「もう一回!」とトレーナーに伝えることが出来るようになりました。「もう一回!」という表情がほほえましく、本当に素晴らしいです。次は「一緒にしよ」って伝えることができるといいね。(横尾)

subaco training
「人生って挑戦だ!」
subacoでは8月から重度訪問介護従業者養成研修を行いました。研修にはsubaco trainingのメンバーも講師として参加しています。
これまでの研修ではHさんが活躍されていますが、今回はHさんに加えKさんが講師に初チャレンジです。
Kさんは今年subaco trainingに通所を始めたメンバーで、次々に新しいことにチャレンジしています。先日大阪医専様で行ったデリバースクールでも初めて講師という役割を経験しましたが、その次のチャレンジとして今回の研修で人権について講義を行いました。

人権という内容は難しいと話していたKさんですが、トレーナーと話し合いながら人生を振り返り人権について感じたことを得意なパソコン操作で資料にまとめあげました。そして、受講生さんに「仲間」と「チャレンジ」をキーワードとして人権の大切さについて講義しました。
Kさんは「中学生の時に応援団に入りたい思いがありましたが悩んでいました。しかし、応援団の友人に相談すると“入っていいよ。でも練習は手加減しないよ。”と言われ、団旗を持ち上げる大役を任されました。この時、仲間の言葉に人権を尊重されたように感じた」と話しました。人権とは「安心・自信・自由」があることだと言われています。Kさんも友人の言葉に応援団に入ってもいいんだと安心し、仲間と練習に励んだことで自信を持って団旗を持ち上げることができたと話されていました。思いを受け入れられて自分らしくチャレンジ出来たことに自由を感じられたようです。今回の講師の役割も自分にできるのかという戸惑いがあった中で講師をやってみたい気持ちとHさんに「一緒にやろう」と声をかけられたことでチャレンジすることが出来ました。
今までの人生にはないような勇気のいる一歩だったと思います。これからもメンバーと共にsubaco trainingで新しいことにチャレンジしていきましょう!(青木)
すばこだより9月号(PDF版)