大阪市天王寺区・西区の
児童発達支援・生活介護「スバコ」

お箸と食事と交流


本日はsubaco kidsの藤原トレーナーの報告を紹介します。

 

 

なつみさん

 

保護者さまの主訴はSubacoで楽しく過ごしてほしいということや、コミュニケーションや情動面だったのですが、日常生活動作や生活関連動作で苦手なことがないか、アンケート用紙や連絡帳、電話連絡などで聞き取りをしていったところ、お箸の操作に少し苦手さがあることが分かりました。

  1. 能力障害:食事動作(お箸)の実用性が低い

  2. 社会的不利:給食の不利、外食の不利

以下、subacoでの食事動作の観察です。

 

場面設定:お菓子(とんがりコーン、バームロール)を割り箸で食べる(設定があまりできていませんでした)

 

実用性について

 

正確性が低い

  1. 持ち方がぎこちない

  2. 箸先が合っていないことがある

  3. 箸先が開き、後ろが閉じる、またはクロスしている

 

安定性が低い

  1. お菓子が箸の中で少し回ることがあった

 

社会容認性が低い

  1. 持ち方がぎこちない

  2. 箸がばってんになることがある

  3. 机に肘をついている

  4. 姿勢が悪い

 

信頼性が低い

  1. 食材によっては落としそう(今回は落とすことはなかった)

 

 

(正しいお箸の持ち方)

下側のお箸は母指のCM関節付近と環指のPIP関節のやや上部で固定し、操作時も動かさない。上側の箸は母指・示指の指先指腹と中指PIP関節付近の側腹で軽くつまむ。主に母指のIP関節・示指と中指のPIP・DIP関節の屈曲運動で操作する。

 

なつみさんの場合

 

身体と物の関係

  1. お箸を二本ともほぼ同じ位置で固定している

  2. お箸の後ろは約2.5~3cmが母指のCM関節付近から出ている

  3. お箸と手の設置点は母指CM関節付近・示指DIP関節付近の側腹・中指DIP関節とPIP関節の間付近

 

身体と身体の関係

 

指と指(右手)

  1. 母指 伸展〜過伸展

  2. 示指 PIP関節・MP関節屈曲

  3. 中指 PIP関節・MP関節屈曲

  4. 環指 DIP・PIP関節・MP関節屈曲

  5. 小指 DIP・PIP関節・MP関節屈曲

なつみさんは主に示指と中指のMP関節の屈曲運動でお箸を操作しているようです。またそのとき、お箸には触れておらず関係のない、環指と小指のMP関節も同時に屈曲運動をしていました。

  1. 手と手首 背屈

  2. 手と前腕 回内←中間位→回外

  3. 前腕と肘 肘関節屈曲位

  4. 肘と肩 肩関節外転・内旋

  5. 肩と体幹 肩甲骨が挙上している 

 

問題点の仮説

  1. 視覚と手指の固有覚の協調運動

  2. 手指の巧緻運動・分離運動

  3. 触覚識別

  4. 図形操作知覚

  5. 手指の固有覚の情報処理

  6. 姿勢

  7. 視空間知覚

  8. 眼球運動

  9. 両側運動協調

  10. シークエンス行為機能

  11. 測定機能

 

お箸の使用状況、保護者・本人からの情報

  1. 学校の給食ではお箸を使用(スプーンなどもある)

  2. 家庭では普通のお箸よりも矯正箸を使いたがる(「こっちのほうが使いやすい」と本人が言う)

  3. 丼もの、めん類などをお箸で食べるのが苦手なようででスプーンやフォークを使いたがる

  4. 本人も鍋物のめん類は取りにくいと言う

 

現在、保護者様に家庭での食事場面の様子の動画を撮ってもらえないか願いしています。

その様子や、苦手なめん類・丼ものに近い設定で食事動作を観察をするとともに、

片手で2つ以上の操作が必要な教具(ゴム鉄砲)を用いての手指の使い方の観察やJPANでの「指あて」「握りくらべ」「宝探し」などの検査を進めたいと思っています。

また、まだまだ学校での様子などの情報収集(社会的不利が生じている場面)が足りないとも思います。学校での様子を見学したり、先生の話を聞いたりできればいいのですが、担任や支援級の先生にチェックリストやアンケート用紙への記入をお願いできないかなども考えています。

また、なつみさんなら本人に話を聞いてみてもいいのかもしれないと思っています。聞き方は考慮する必要もあるかと思いますが。

なつみさんは1月にモニタリング会を行う予定です。

藤原

 

 

社会的不利について、食事会の参加不利 も考えられますね。

お箸の持ち方が不格好という印象は明らかに社会的にいいものではないと思います。

能力障害の大きな分類として、遂行性の障害というよりも、社会性の障害との結びつきが強いと思います。

食事そのものが個人的にできないという問題ではなく、社会的にできていない・うまくないと評価されることがあるということですね。

本人が自覚しているかは別ですが、人前で食事動作を見せることの苦手意識は、成人期では、他者との交流場面に大きく影響がでると思います。

ADLにおいても、身の回り動作で『マナー』が加わります。特に食事のマナーというものは入浴や排泄、整容等に比べて対人関係的に必要性が高いです。

発達障がい(特に発達性協調運動症)を抱える子どもにとって、奇麗にお箸を使えるということを療育の長期目標にすることは社会参加を図る上で重要なことですし、決して無駄にならないことだと思います。

 

 

 

 

Gotta break it loose

Gonna keep ‘em movin’ wild

Gonna keep a swingin’ baby

I’m a real wild child

     Real wild child  –  Iggy Pop