大阪市天王寺区・西区の
児童発達支援・生活介護「スバコ」

文字の良さに出会う時。


本を読むことが苦手な子どもがいます。

本が初めから嫌いなのでしょうか?

それとも、本が嫌いになってしまったのでしょうか?

 

私たち『人』と本という『物』はどういう関係なのでしょう?

『食べる』でしょうか?

違いますよね。

『投げる』でしょうか?

違いますよね。

あなたならどう答えますか?

 

『読む』

そう答えるかもしれません。

確かに正解ですが、

私たちと本の関係の始まりは『読む』ではないようです。

 

『読む』ものは『文字』です。

私たちは始めから『文字』が読めたのでしょうか?

そんな子いませんよね。

 

私たちが初めて本に出会った時、

そこで出会ったものはなんでしょう?

感覚でしょうか?

認知でしょうか?

 

 

色を感じたのでしょうか?

文字という形を認識したのでしょうか?

 

 

鮮やかな青色をみて、まるで澄みわたる空のような気持ちになったのかもしれません。

燃えるような赤をみて、静かに沈む夕日のような気持ちになったのかもしれません。

言葉にはできない気持ちを『わぁ!』という声が言葉の意味へと繋いでくれます。

本を読んだのではないのでしょう。

呼んだのでもないのでしょう。

喚んだのでしょう。

自分の気持ちが自分に声を発する力を喚び起こしたのでしょう。

 

 

子どもはそこから目で自分の心を動かすものに名前があることを知り始めます。

例えばこのようなやりとりです。

  (子ども)     (大人)
『これなあに?』・・・『ぞうさん!』

『あれなあに?』・・・『ぺんぎんさん!』

『じゃあ、あれは?』・・・『あの どうぶつは 分からないよ』

『どうぶつ?』・・・・『どうぶつっていう名前じゃないよ。どうぶつは仲間の名前だよ。』

『ふーん』

 

 

そんなやりとりを毎日こつこつ繰り返していきます。

 

するとどうでしょう?

『見ることができるもの』は、『呼べるもの』であることが当たり前になってきます。

そうなれば次の挑戦です。

どんな挑戦でしょう。

クレヨンを握って、画用紙を広げて・・・。

そうです。

描いてみよう!

なぐりがきから、お絵描きの始まりです。

『見ることができるもの』が『呼べるもの』に、そして『描けるもの』へと発展していきます。

 

 

   大人        子ども

『これ なんだい?』・・・『パンダ!』

『じゃぁ これは?』・・・『かいじゅう!』

『すごいね〜。じゃぁ書いてあげる。か・い・じゅ・う』・・・・『それなぁに?』

『文字だよ』・・・・・・『文字?』

 

そんなやりとりを毎日こつこつ繰り返して文字という文化の中で育っていきます。

しかしながら、この文字という文化は文明の発明品です。

あくまでも品物ですので長所もあれば、短所もあり、

時代についていけない弱さもあります。

 

 

文字は目で自分の心を動かすもの(見えるもの)の『変換記号』にすぎません。

『そら』という文字の美しさは本当の青く澄んだ晴れわたる空の美しさには勝てません。

 

自分の心を動かした空の美しさを、

本当ならばそっくりそのまま相手の目に写すように伝えたい。

それが簡単にはできないから、私たちは気持ちを声や文字に託します。

話し手・書き手側には文字記号に変換する表現力が必要です。

そして、読み手側には文字記号を解凍する想像力が必要です。

 

互いの能力で『疎通』が実現します。

 

しかしながらどうでしょう?

写真やテレビの映像など、互いが文字記号と付き合う努力を少なくして『疎通』できるメディアが私たちの生活を囲んでいます。

 

 

スマートフォンやタブレットで人気のアプリでは、絵文字がどんどん発展していきます。

『了解』という言葉も、

真面目に文字だけで託してしまうと、なんだか外れているような気がしませんか?

 

 

文字をうまく読めない子どもがいます。

 

その子自身の問題でしょうか?

実は『文字』にも問題となる短所があるのでしょう。

 

その短所を私たちが知ること、

私たちの生活が文字に頼らずにすむ文化へと少しずつ変化していること、

その事実に私たちが気づくことも、

文字がうまく読めない子どもの理由を理解するために大切なことだと思います。

 

文字がうまく読めない子どもに、与えるべきものはなんでしょうか?

検査でしょうか?

文字をうまく読む方略でしょうか?

文字を読む機会を増やすことでしょうか?

 

それだけではないと思うのです。

文字の長所に子どもが出会うことが大切だと思うのです。

 

文字は確かに写真や、映像の写実性に負けるかもしれません。

しかしながら、文字には抽象的な力があります。

目には見えない大切なものを書いて目に残す力があります。

 

今月もスバコスクープを開催することができました。

るーくんがお父さん・お母さんに呼んだ手紙。

るーくんの『ありがとう』の気持ちを、るーくんが言葉にして、

その言葉を書いた西原リーダー。

その手紙を優しい声でしっかり読むことができたるーくん。

るーくんのお父さん・お母さんに憧れた夜でした。

 

 

子どもたちが出来ないこと・苦手なこと・嫌いなこと・避けていることが

ただ出来るようになるために努力するのではなくて、

親子がその努力と向かい合い生まれる幸せに出会えるために、

私たちがお手伝いできるように。

 

 

悩んだり、孤独を感じたり、諦めたほうが自分のためと思ってしまうこともあるでしょう。

それでも、共に学び続ければ必ず訪れると信じています。

 

この子を産んでよかったと思える瞬間が訪れること。

この子が我が子の誇りになること。

みんなの光になること。

 

 

 

 

Hey Jude, dont make it bad.
Take a sad song and make it better.
Remember to let her into your heart,
Then you can start to make it better.

        Hey Jude : The Beatles