知床旅情
私の大好きだった利用者さんが今日、亡くなってしまわれました。
今、家に帰り、その方がよく歌われていた曲を聴いています。
森繁久彌さん作詞・作曲の『知床旅情』です。
その方は北海道出身の方で、北方領土問題で職を求めて50年ほど前に大阪に出てこられた方でした。
その方の口癖は『何でも言うてや!』『なんでもやるで!』でした。
歩行練習にしろ、筋力強化練習にしろ、
料理の買い出しにしろ、お風呂の掃除にしろ、
何かと私とのやりとりの返答がこれでした。
努力家に思われますが、けっこう適当な性格でその日が良ければそれで良し。
習字となれば決まって2パターン。
『咲くもよし散るもよし野の山桜、花のこころは知る人ぞ知る』
または
『花は桜木、人は武士』
享年96歳でした。
息子さんが亡くなられたことを知り、
『息子が先に死ぬまで長生きなんてしたくないわ。』
と何度も嘆き悲しまれ、認知症も進行し、肺炎になり最後でした。
最後まで歩こうとされていました。
立とうとされていました。
免疫力が落ち、水疱瘡だらけの身体を見て『お願いやから早く死なせてくれ』と
何度もベッドで泣かれていました。
その方と最後に観にいった銀杏並木の公園。
紅葉狩りを提案しても いつもの口癖の言葉はありませんでした。
以下は知床旅情の歌詞です。
知床(しれとこ)の岬に はまなすの咲くころ
思い出しておくれ 俺たちのことを
飲んで騒いで 丘にのぼれば
遥(はる)か国後(くなしり)に 白夜(びゃくや)は明ける
旅の情(なさけ)か 酔うほどに さまよい
浜に出てみれば 月は照る波の上(え)
君を今宵こそ 抱きしめんと
岩かげに寄れば ピリカが笑う
別れの日は来た ラウスの村にも
君は出て行く 峠を越えて
忘れちゃいやだよ 気まぐれカラスさん
私を泣かすな 白いかもめよ
言葉になりませんし、言葉にしたくありませんが
本当にありがとうございました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。