見えない場所を思い出しながら。

ボクは『なんとなく』っていうのが苦手なんだな。
『ごはんだよ』って言われても、『なんの?』って返事をしてしまうんだ。
『お菓子をあげるから』って言われても、『なにをくれるの?』って思っちゃうんだ。
電車を見たらば、それが何の電車か気になるし、
木を見たらば、年輪の模様に見とれてしまう。
だってそうじゃないか?
トラっていう名前のトラなんていないし、
魚っていう名前の魚なんてどこにもいない。
ボクは歯ブラシをうまく使えないし、紐をうまく結んだりすることが苦手なんだ。
みんなから不器用って言われてるみたい。
きちんと歯を磨くっていうのは回数のことだろうか?
ブラシをこする強さのことだろうか?
『口の中がさっぱりしないかい?』って言われても、感覚が鈍いせいか あまりよく分からない。
『ゴシゴシ』って言われても、それがなんの音かつながらないし、
感覚が細かいせいか、ボクには そんなふうには聞こえない。
あー、なんだか歯ブラシの練習がいやになっちゃうよ。
でもね、ビックリしたんだ。
原先生がもってきてくれた大きな歯の模型!
歯ブラシを口の中に入れてる時ってこんなふうになってるんだ。
どんどんボクの目に入ってくるぞ。
この光景が頭の中にこびりついてきそうだ。
さぁ、今日も父ちゃんと一緒に歯ブラシの練習をしよう。
原先生と一緒に遊んだあのシーンを思い出して。
なんとなく想像することは苦手でも、
はっきりと思い出すことは得意なボクだから。
『きれいな色』がどんな色かは分からないけど、
『白い色』なら分かるから。
Is it getting better?
Or do you feel the same?
One – U2