過敏。
発達障がいの症状別として『感覚過敏』という問題をもつ子どもたちがいます。
代表的なものに『聴覚過敏』や『触覚過敏』があります。
これ以外にも、感覚にはカラダが揺れるという『前庭感覚』や関節が動く・筋肉が伸び縮みするとうような『固有受容覚』という感覚があり、それらの感覚にも『過敏』という症状はみられます。
でも、そのような状態を『固有受容覚過敏』とか『前庭感覚過敏』という用語で、言い表したりはしません。
子どもの状態として用いる事は用いますが、あまり常用語ではないという意味です。
では、なぜ常用語ではないのでしょうか?
外からあまり『固有受容覚』や『前庭感覚』が過敏になっていることが目立たないからなのかもしれません。
『うちの子、すっごい関節が動くことに過敏なの』
『うちの子、少しでもカラダが揺れることに過敏なの』
確かにそういう子どもはいますが、見落とされがちです。
そのような状況の子どもを世間は『注意』や『覚醒』の問題としてとらえていることが多いように思います。
『多動なんです。』
『こわがりなんです。』
そのような表現で説明している場合がよくあるのではないかと思います。
話しは戻って、『聴覚過敏』。
これが問題として際立つのはなぜでしょうか?
一つの理由は機能的な弱さのある子どもだけでなく、そばにいる私たちも同じ感覚刺激(音)を受けているからなんでしょう。
子どもたちの耳に入っている感覚が私たちの耳にも同じように入ってきている感覚だから理解しやすい。(イメージのしやすさが共感につなげているのかもしれませんね)
もう一つの理由は子どもにとって『避けようが難しい』からなのかもしれません。
自分の手足の関節を動かしたり、身体を揺らしたりというような感覚は自分が身体を運動することから、出現するので、ある程度自分で調整することができます。
(極端にいえば、自分の身体がゆれることが嫌であれば、あまり動かなければいいんです)
教室では一人で机に向かって黙々と本を読んでいれば良いですし、
それが趣味にもなって、特技にもなります。
しかしながら、『聴覚』という感覚はなかなか自分の思う通りに耳に入ることをコントロールしにくいものです。
音がならないように静かに扉を閉める事が自分はできても、
他の子の扉の閉めかたが音が鳴らないようにすることは、その子に成り変わるか、強く命令でもしない限り難しいですよね。
自分の耳の中に入ってくる音は自分の音ではなくて、自分がいる環境の情報であり、
『世界からのお知らせ』でもあるんです。
道を歩いている時や、部屋にいる時から聞こえる『ブーン』という音は自分の周りに道路があって、車が走っているという情報でもあり、気をつけて外に出るんだよという『安全な生き方』のお知らせでもあります。
学校で聞こえる騒ぎ声はなにやら向こうで『興味関心の高いことが行なわれている』というお知らせなのかもしれません。
そんな『世界からのお知らせ』を受けることに弱さがある。
どうでしょうか?
社会(公園にいったり・学校にいったり)に参加することにとって
とても重い問題ではないでしょうか?
写真は高津神社に遊びにいかせて頂いた時のものです。
親切な宮司さんのはからいで、境内に入らせて頂く瞬間です。
三人の子どもがいて右端の子(ふーたん)が境内に入るのは何番目でしょうか?
そんなふーたんが左の示指でおさえている場所はどこでしょうか?
彼は『自閉症』といわれていますが、
自閉症の方々が『他者への関心性が低い』と知られる事は
自閉症の『原因』なんでしょうか?
それとも自閉症の『結果』なんでしょうか?
どちらにもなりうるとは思いますが、
この時のふーたんに『こわがらないで入っておいでよ。』と励ますことは彼にとって優しい言葉がけなんでしょうか?
彼が感じている『世界からのお知らせ』は『恐さ』が混じっているのかもしれません。
『嫌な音がするかい?』
『先生、先に入ってどんな音がするか確かめてくるね。』
そんなことが彼に伝わるような関わりができれば、
彼だって『自分のことが分かる・分かろうとしてくれている人がいるんだな』
そんな気持ちを積み重ねて人と関係していくことができるのかもしれません。
ボクたちがハンデを抱える子どもたち・大人たちと一緒するために
彼ら・彼女らがハンデの少ないボクらと一緒するために
『感覚過敏』は決して軽く考える事のできない問題です。
それではどうすれば良いか?
トレーニングはできます。
でも、まずは周りが彼ら・彼女らを理解することが始まりだとボクは考えています。
問題を抱える子ども・大人たちとの関わりの目的は
『治す』ことが2番で、
『認める』ことが1番ではないでしょうか?
Lucille, baby, satisfy my heart.
I played for it, baby, and gave you
such a wonderful start.
Lucille -Little Richard