大阪市天王寺区・西区の
児童発達支援・生活介護「スバコ」

【2016年10月号】すばこだより「穴の先には何が見える?」他


秋も一段と深まり、朝夕の寒さが身にしみる季節となりました。運動会や遠足などの行事も終わり、ようやく落ち着いてホッとしておられるお子様も多いのではないでしょうか? 早いもので今年も残すところあと2ヶ月です。寒暖差の激しい時期なので体調など崩さないようお気をつけくださいね。

subaco switch

「穴の先には何が見える?」

AくんはTVゲームのキャラクターになりきって、たたかいごっこで遊ぶことが大好きな男の子です。そんなAくんは小学5年生。学校では家庭科がありますが、家庭科にはAくんの苦手なものがあります。それは裁縫針に糸を通すことです。Aくんは指先を使った細かな作業が苦手なのです。

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switchでやってみると、糸を通すことができず「いやだ〜!」、「できない〜!」と投げ出してしまいました。上手くいかなくて 衝動的に投げ出したA君、イライラが募ってしまったようです。この嫌な思い出は、脳の扁桃体という部分に記憶されているのですが、 扁桃体は快・不快を判断するのが主な役割です。不快な情報をキャッチするとノルアドレナリンというストレスホルモンが分泌され興奮状態になってしまうのです。興奮状態になると余計に上手くいきません。

そこでトレーナーは、木綿糸を通す普通の裁縫針ではなく、 太い糸が通せる針穴の大きい裁縫針を用意しました。そして、糸を押し込もうとするAくんの動作に「そ〜っと、そ〜っと」と掛け声をします。細かい作業が苦手なA君でしたが、そ〜っと手を動かし穴の大きな針に糸を通せて、思わず「できた!」イライラが一気に吹き飛ぶ成功体験!この体験がドーパミンという神経伝達物質を分泌させA君のやる気スイッチを押します。大きな穴だけど糸を通せたという成功体験がやる気になって、失敗してもイライラせずに何度も成功!自信もついて、今では小さな針穴に糸を通すこともできるようになりました。

何度も見つめた小さな穴から集中することや慎重さを学んだA君。覗いてみると大きな未来が見えるかな?できることを増やしていこうね!(重松)

subaco training

「利用者の顔、講師の顔」

subaco trainingでは来年の1月末に障がい者居宅介護従業者基礎研修を開催する準備が整いました。この研修は、以前の居宅介護従業者養成研修3級に当たり、平成25年4月より名称が変わりました。身体・知的・精神の障がい(児)者の事例など障がいについて学び、障害者(児)の様々なニーズに対応した専門的な知識、技能を身につけることを目的としています。この研修を修了すると居宅介護従業者(障がい児(者)ホームヘルパー)として働くことができるようになるのですが、なんと大阪ではsubacoでの開催が初めてなのです。

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この研修のカリキュラムの中には障がい当事者を交えて講義を行うことが望ましいとされている科目があるのですが、trainingの メンバーであるHさんも当事者として講義に参加する予定となっています。「どのような生活を送っていて、どのような思いがあるのかを生徒に伝えていくこと」それがHさんの役割です。Hさんにはサービスを受ける「利用者の顔」と介護を勉強する生徒へ実情を伝える「講師の顔」があるのです。「どのようにして伝えようか?」「ちゃんと喋れるかな?」と 自分の役割を果たそうと前向きに取り組まれています。

人は生きていく上で物・人・社会など色んな環境と向き合う事になりますが、それぞれの環境の中で様々な役割があります。Hさんの熱い思いとチャレンジ精神でこれからも様々な「顔」を持ち、様々な「役割」を果たしていくことでしょう。Hさんの活躍に乞うご期待!!(古川)

subaco kids

〜リズムに合わせて1・2・ジャンプ!〜

Jくんは 今年で6歳になります。歌にあわせて体を動かすことが大好きな男の子です。そんなJくんですが、縄を跳ぶことが苦手で大波小波でも引っかかってしまい、お友達が大縄跳びをしている時は傍でジャンプをしながら見ているようです。実際にJくんが大波小波をしてみると、縄に向かって跳んだり、縄が足に当たってからジャンプをしていました。縄をうまく跳ぶには縄が来るタイミングに合わせて跳ぶこと・「見る-膝を曲げる-跳ぶ」という一連の動作を繰り返すことが必要です。

Jくんの大波小波の様子から、動作を組み立てることや力加減の調整、リズムに合わせて動作を行うことなどに関わる「運動企画」に難しさがあるのではないかとトレーナーは考えました。そこで、「こえてくぐってエクササイズ」という検査を行いました。この検査は膝の高さに張られた紐を「跨ぐ-くぐる」という動作で5回繰り返します。まずはトレーナーがお手本を見せます。それを見たJくんは、迷いなく一回目は紐を跨いでくぐることができました。しかし、二回目は一度跨いだ後もう一度跨いでしまいました。他にも、紐を跨ぐ際にバランスが崩れそうになる程高く足をあげたり、後ろの足が紐に引っかかりそうになる様子が見られました。Jくんには一連の動作を組み立てることや物と自分との位置関係の把握に難しさがあったようです。

運動企画は身体を動かす感覚(固有受容覚)や揺れを感じる感覚(前庭覚)を取り入れることで発達すると言われています。そこでトレーナーは運動企画を促しながら、大縄跳びのように動作をタイミングに合わせる活動として「ブランコシュート」というレッスンを行いました。縄跳びは近づいてくる物に対してタイミングを合わせて動作を行いますが、このレッスンでは自身が物に近づいたタイミングに合わせて動作を行います。Jくんはうつ伏せでブランコに乗り、トレーナーがブランコを揺らします。Jくんは箱から近づいたり離れたりしながら、タイミングに合わせてボールを箱へ入れます。1回目は手を離すタイミングが遅く、ボールは箱の手前に落ちてしまいました。2回目はトレーナーが「せーのっ!ぽい!」と声をかけるとボールは箱の縁へ当たって入りました。3回目、ボールは縁へ当たることなく箱へ入りました。少しずつタイミングに合わせて動作を行うことが出来るようになったJくんは、今では大波小波のリズムに合わせて跳べるようになりました!次は、1回転する大縄跳びに挑戦だ(^^)v(松野)

《おしらせ》

11月のsubaco holiday は第2・4土曜日の開催となります。楽しいプログラム盛りだくさんでお待ちしています!ぜひご利用くださいね◎

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「未来はノーベル文学賞!」

小学校6年性のHくんは、みんなを驚かせることが得意です。何の変哲もない箱も、Hくんにかかるとビックリ箱に早変わり。「人形の下にこの人形も押し込んでるからな、ほら‥!」と説明までバッチリです。ですが、作文になると口頭説明のようにはいかないようです。課題の作文も少し書いたところで手が止まり「ムリー!」と頭を抱えてしまいました。

ではHくんのつまずきはどんなところにあるのでしょうか?実際に書いてくれた文から紐解いていきましょう。「酸素と水いるけど酸素ないから葉っぱしおれて花しおれて‥」これはHくんの作文の一節です。助詞が抜けているために、読み手からは少し読みにくい印象を受けます。そこでLCSAやCARDという読解力を文法理解の観点から見る検査を行いました。すると、様々な助詞がある中でも、登場人物同士の関係性を表す格助詞の使い方に苦手があることが分かりました。格助詞はたった1文字ですが、「犬が追いかける」「犬を追いかける」「犬と追いかける」など、場面に大きな変化を起こします。格助詞それぞれが表すイメージを掴み使い分けることが、表現したい場面を書くためのキーポイントなのです。

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そこでトレーナーは、「スバコ劇場」というレッスンを考えました。まずトレーナーが人形を使って「くまがトマトを食べる」「くまをトマトが食べる」という場面を再現します。動作主を表す「が」の位置が変わっただけで、まるでホラー映画‥。Hくんもビックリです!その後、今度は人形や動作を変えてHくんが文を作ります。作った文をトレーナーと一緒に再現ながら、より面白い場面にするには?と「が」、「を」の位置を試行錯誤しました。他の格助詞も同じように劇にして比較することで、徐々にそれぞれのイメージが描けてきたようです。

表現したい場面がだんだん自由に作れるようになったHくん。「電車がくまに乗った。」という文を作り、「まさかやろ!」とみんなを驚かせる遊び心を発揮しています。お話作りで、書く事が少しずつ楽しくなってきたね。今度はどんなお話にする?小説家Hくん、次の作品も期待しています!(喜多村)