【2016年3月号】すばこだより「目を閉じて我慢!!-自制と心理的距離-」他
桜のつぼみも膨らみはじめ、少しずつ春の訪れを感じる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 3月で卒園・卒業を迎えられた皆様、おめでとうございます。4月には進学や進級をむかえ、新たな1年がこれからスタートしますね!それぞれのペースで、一緒に課題に取り組んでいきましょう♪
subaco switch
「目を閉じて我慢!!-自制と心理的距離-」
「食後のデザート」や「衝動買い」など、分かっていてもなかなか我慢することが難しいものって誰にでもありますよね。 そんな時、皆様はどのような方法で我慢されるのでしょうか?今回は、目を閉じることで我慢する方法についてご紹介します。
心理学者のヤーコブ・トロープとニラ・リバーマンによると、人は出来事や対象に対して心理的距離が遠い時は抽象的な レベルで考え、心理的距離が近い時は具体的なレベルで考える傾向にあるそうです。心理的距離は①時間(過去、未来)②空間(近い、遠い)③対人関係(自己、家族、友人、他人など)④確信(確信か仮説か)の4つの視点に分類することができ、これらの中で自分から距離が遠いほど、価値や目的などの抽象的な側面から対象にについて考えることができるようになるのです。
T君は楽しそうなおもちゃを目の前にすると、順番を待てなかったり、いつまでも遊び続けてしまうことがあります。T君にとって目の前のおもちゃは心理的距離が近いために、どうしても我慢することが難しくなってしまうのです。

そこでトレーナーは、T君に目を閉じて、おもちゃを見ないようにすることで、気をそらせて心理的距離を置く方法を教えました。今はまだトレーナーに促されながらですが、目を閉じる ことで少しずつ我慢できる時間が長くなってきています。今後は、注意をそらしたり、あれこれと空想してみたりと、認知的な働きを用いることで対象との心理的距離を整える方法をT君に 身につけて欲しいと考えています。(重松 )
subaco study
やった〜!「あ・け・て」って言えたよ!!
スバコスタディに通うHくんは、3歳になったばかりの笑顔がとっても素敵な男の子です。Hくんが最近できるようになったこと。それは…保護者様やスバコのトレーナーに対して「あけて!」と言葉で要求することです!!!

私たちがHくんとはじめて出会ったのは去年の11月。その頃は、Hくんから何かを発信したり要求をしたりすることはほとんどなく、こちらからの呼びかけへの反応も少ない状態でした。視線もなかなか合いにくい印象で、発語もほとんどありませんでした。
語彙の獲得の手前に必要なスキルに「共同注意」があります。「共同注意」とは、他者の顔や視線の方向、指差しなどを頼りに、他者が注意を向けて いる事物に自分も注目すること、です。耳からだけでなく、相手の視線や表情など、目からの情報も手掛かりにできれば、相手が伝えたいことがより 伝わりやすくなります。また、言葉が示す事物に注目できれば、はじめて出会うモノであっても、大人が笑顔で対象のモノをみているから安心だという <社会的参照>にもつながっていくと言われています。
関係性を作っていくところから、Hくんのレッスンは始まりました。モノへの注視を促したり、Hくんが大好きな布ブランコやくす玉わり遊びなどを通して、視線や言葉かけへの気づきを促したりするうちに、Hくんから視線をトレーナーの方に向けてくれるようになってきました。はじめのころは有意味語がほとんど出ていなかったHくんですが、今では「あけて」だけでなく、「ママ」「りんご」「ガタンゴトン」「待て待て!」などたくさんの話せる言葉が増えました!「◯◯って言えました!」そんなお母様との連絡帳でのやりとりが、毎回の楽しみになっています。よ〜し!今日も身体全体でいっぱい感じて、目で表情で、言葉で、たくさん話そう♪(原 )
subaco kids
塗り絵って楽しい!
皆さんは初めて鉛筆やペンを持ったときのことを覚えていますか?私は真っ白な紙が自分の好きな色に染まっていくことにワクワクしながら絵を 描いていたことを思い出します。今回は鉛筆を動かす「運筆」について考えていきたいと思います。
Sさんは、体を動かす活動や塗り絵などの手先を使う活動も大好きです。しかし塗り絵をすると、枠外に大きくはみ出してしまう特徴がありました。Sさんは、どうして大きく枠外にはみ出してしまうのでしょうか?Sさんは上肢をブンブンと振り回すように色を塗っていました。Sさんの運筆時の 運動は肩関節が中心(運動軸が上腕骨)であるようです。
私たちは物を動かすとき、大きく動かすには身体の中心部に近い関節(肩関節や股関節)を、 細かく動かすときは身体の中心部から遠い関節(手関節や手指の関節)を動かして物を操作します。Sさんは上腕骨が軸になっているため、鉛筆を細かく操作することが難しくなっているのではないかと考えました。

そこで、ディッシュゲームという教具を使用し、手関節の動きを確かめてみました。 ディッシュゲームは片手で台を持ち、コマを転がして真ん中のくぼみへコマを移動させるゲームです。コマをくぼみへ移動させるためには、前腕や手関節をうまく操作しなければなりません。Sさんは台からコマが飛び出してしまいます。肩関節や肘関節が一緒に動いてしまい、手関節だけをうまく動かすことができていないのです。運動軸を上腕骨から中手骨(肩関節の運動から手関節の運動)に移行するために、このゲームを机に肘をつき、肩関節を固定した状態でレッスンを行います。コマをくぼみへ入れるためにだんだんと細かな運動パターンを獲得してきました。すると、運筆時も手関節を動かし細かな運動で色を塗ることができるようになってきました。以前に比べる細かなパーツも上手に塗れるように変化してきました。
ただのおもちゃかもしれませんが、目的を持って行うことで素晴らしい教具に変身するのです。 さぁ、明日はどんな教具を使おうかな♪(河口)
《おしらせ》
来月のsubaco holiday は、毎週土曜日開所致します。楽しいプログラムをたくさん用意してお待ちしています!ぜひ皆様ご利用下さい。
subaco training
「自立と参加を考える生活介護」
皆さんは障がいを抱えている方にとっての自立と参加とはどのようなものだと思いますか?心身の機能的な弱さを抱えている方にとって「物を掴む」「順番を覚えて実行する」など、 生活上必要となるスキルを獲得すればそれは「自立」かもしれません。では、成人であるメンバーの皆さんが活き活きと輝けるステージは「自立」だけなのでしょうか?


先月、2月24日に光陽特別支援学校へ通われている児童の保護者様が10名、卒業後の 進路について検討するためにsubaco trainingへ見学に来て下さいました。1時間という短い 時間の中でメンバーさんはそれぞれ自分の取り組んでいる目標をPRして似顔絵を描く・お茶を入れるなど自分の能力も精一杯活かしておもてなしされていました。このように様々なレッスンによって獲得してきたスキルを活かす事で、それぞれが役割や責任を感じながら社会参加に繋げて行く事が出来るのではないでしょうか。
支援者である私達の役割は「準備万全!」と自分の出番を待っているメンバーさんが脚光を浴びれるような参加の機会・環境を提供していく事でもあると考えています。新年度からは新たなメンバーも加わり、資格研修事業も実施します。それぞれの能力で支え合って「やりがい」や「達成感」を感じて頂けるステージを提供していきたいと思いますのでご期待下さい。(中井)