大阪市天王寺区・西区の
児童発達支援・生活介護「スバコ」

【2017年11月号】すばこだより 「if then plan〜嫌な気持ちは破ってすてよう〜」他


 ひんやり冷たい風に吹かれたかと思えばあっという間に木々は色づき、紅葉が秋らしさを見せてくれています。

落ち葉集めなど秋ならではの活動に心を暖めながら、美しく移ろう季節を沢山感じられるといいですね。

 

subaco switch

「if then plan〜嫌な気持ちは破って捨てよう〜」

Rくんは自分の好きなゲームや遊びについて人に話すことが大好きです。

いつも元気いっぱいのRくんですが、実は苦手なことがあります。それは、”難しくても考えてみる”ということです。今小学校で「割り算」を習っているのですが、既に習って分かるはずの問題でもパッと見て”難しい”と判断すると「こんなん出来ない!」と言って部屋を飛び出してしまいます。

Rくんは、“一つのことに意識を集中させる力”である「持続性注意」機能に課題があり、感情的になる場面では特に集中を持続させることが難しくなってしまうのです。そこで、トレーナーは「飛び出したくなったらどうする?」とRくんと相談しました。

「嫌になったら問題用紙を破りたくなる」

と話したRくんにトレーナーは一つの提案をしました。

「じゃぁ、嫌になったらこの紙を破っていいよ」と不要な紙を用意しました。

実際に割り算の問題に取り組み始めると「こんなん分からへん!」と言ってイライラし始めたRくん。用意された不要な紙を「ビリリ…」と静かに破くと、再び問題に取り組み始めました。

「6×8はいくらになる?…じゃぁ6×9は?」

「あ!分かった!54÷6=9!」

Rくんはとても嬉しそうに回答を書き込みました。

これまでは、衝動的に飛び出してしまっていたRくん。不要な紙に映した嫌な気持ちと向き合って自分を抑えることが出来ました。

これからは、イライラをぶつける物がなくても自分を落ち着かせるための方法を見つけて行こうねp(^^)q(有馬)

 

subaco study

「一文字でどう変わる?」

 Hさんは10歳の女の子。絵を描くことが好きで、よく絵を描いては楽しそうにトレーナーに見せてくれます。

そんなHさんですが、国語の時間は表情が曇ってしまいます。特に、読んだ文の意味を理解することや文を書いて表現することに苦手さを感じているようです。難しさの原因を探るため、subacoでも音読と作文にチャレンジしてもらいました。読んだ文について質問をすると、「なんだっけ?」と困った顔に…。

また作文でも、状況をどう書き表してよいのか分からず、Hさんの本来の意図とは違う文章になってしまうということがありました。この様子から、Hさんは助詞の理解に難しさがあるのではないかと考え『LCSA』という言語・コミュニケーション発達の検査を実施しました。その中でトレーナーが注目したのは助詞の穴埋めの課題です。Hさんが悩みながら完成させた文章は、「人形は女の子に服をきせています。」・・・イメージしていた光景とは違った文章が出来上がってしまいました。

 文章理解には①語の意味②語順③助詞の3つの方略があるといわれています。

 Hさんは、文の始まりの語に付く助詞は「は」、次は「に」を使うというように、語の順番で主語を決めている段階であるようです。日本語は、語順だけではなく「助詞」が意味決定における大きな役割を担う言語です。助詞を獲得することで、多彩な表現で出来事を示すことができるのです。そこでトレーナーが考えたおしごとは「一文字でどう変わる?」です。

 今日のお題は「ねこ□わたす。」の□に「が・を・に」を入れてそれぞれ絵を描いていきます。

□に入るたった1文字を変化させるだけで、文章が表すイメージが大きく変わることを、まずはHさんに気づいてもらおうと考えたのです。

「真ん中が【に】だったら、誰かがプレゼントを持ってるんだね。それから渡すんだね。」

 自分で絵に描いて表し、違いを比べていくことで助詞の使い方に気付けたようでした。

そして、ついにHさんは助詞の使い方に注意して、文を大好きな絵で表現することができるようになったのです。

完成した漫画をお母さんにも披露して、素敵な笑顔を見せてくれました。Hさんやったね!(竹村)

 

subaco kids

「ぐらぐらチェア」

皆さんはバランスディスクという教具をご存知でしょうか?写真のような形で中には空気が入っています。9月号ではこの上に乗ることやジャンプをする際に、身体が揺れても落ちないようにバランスをとることを促す教具としてご紹介しました。

今回ご紹介する使い方は、バランスディスクを椅子の座面に敷き、その上に座って活動をしてもらうというものです。

 A君は身体が揺れる感覚(前庭覚)を人よりも少し感じにくいことにより、座位での活動中、前庭覚刺激を求めてすぐに離席してしまいがちです。そんなA君にこの椅子に座ってもらうと、普段よりも集中して食事や工作などの座位活動に取り組むことができたのです。

 不安定な座面であるため、姿勢を保持しようとするだけでも身体が揺れ、普段の座面に比べて前庭覚への刺激が多くなります。それがA君にとっては心地よい刺激で、求めている感覚を得ることに繋がったため、普段よりも集中することができたのです。

 B君は工作の時間中姿勢をずっと保持することが難しく椅子の背もたれに頼ってしまい、ハサミや鉛筆を使用することが苦手です。B君にもバランスディスクを敷いて座ってもらうことで普段よりも腹筋と背筋に力を入れて姿勢を安定させることができ、背もたれに頼らず姿勢を保持することに必要な体幹筋を意識する経験になりました。

この環境設定では足が床についていないと姿勢を保持しづらくなるので、ご自宅で行う場合にも、足が床についているかを確認して行ってくださいね。(松野)

 

subaco bond

はじめの一歩

 「subaco bondってどんなところ?」「何をするの?」新しい場所に行くときはドキドキしますよね。

 Aさんは、笑顔が素敵な2歳の女の子です。Aさんが初めてsubaco bondに来た時はお母さんとなかなか離れられず、必死にお母さんにしがみついていた姿が今も思い出されます。

 母子分離が難しかったことで、最初の目標として「泣かずにママとバイバイができる」という目標を設定しました。では、なぜお母さんとの分離の時に泣いてしまうのでしょうか。

 子どもは母親などの養育者を安全基地のように感じられると、好奇心は外の世界に向けられます。つまり、一人で行動してみて不安になったらまた母親のもとに戻るという行為を繰り返し、徐々に母親から離れて自立していきます。

 Aさんはお母さんを心の中でイメージは出来ていますが、離れることでそのイメージが消えてしまい、不安になっているのではと考えました。アプローチとしては、意図的に視線を合わせて微笑みかけたり、Aさんの動きを真似たりしながら、まずはトレーナーに対する安心感を築いていきました。同時に、同じ流れを繰り返し、お母さんが必ず迎えに来てくれるという構造をつくり、Aさんの中で「お母さん」という心的表象(心の中イメージ)がさらに強くなるよう働きかけました。そうすることで、愛着への基盤の獲得が出来ました。

 今では、トレーナーに対しても接近行動や後追い行動が見られるようになり、お母さんと離れる際も泣かずに活動に取り組めるようになりました。subaco bondという安心して遊べる場所がまた一つ増えたAさんです。この思い出を大切に、Aさんがこれからどんな成長をしていくのか楽しみですね。(横尾)

 

subaco training

「ワイワイみんなでD.I.Y

 subaco trainingではD.I.Yをしています。D.I.YとはDo It Yourselfの略語で、「自身でやる」という意味です。

社会との関わりを大切にしているsubaco trainingではメンバーが外に出ていく活動だけでなく、事業所に来訪されるお客様を気持ちよく『おもてなし』する事も必要だと考えています。そこでメンバー達とミーティングした結果、今回は玄関周りをアレンジすることに決定しました。

 玄関には1年間毎日subaco trainingのメンバーを迎え続けてくれたマットが年季を感じさせていました。Hさんは既製品をそのまま使用するより一工夫することでそれぞれのスキルを活かした活動になるのでは?と提案して下さいました。パソコンを使って様々なD.I.Yレシピを参考にして必要な材料を立案し、Kさんは電動車椅子で材料の買い出しを担当しました。

 30枚の芝生タイルを抱えながら電動車椅子を操作してようやくトレーニングルームに戻った時、完成が楽しみですねと話してくれました。年末には忘年会や重度訪問介護養成研修を企画しています。

来訪されるお客様が気持ちよく過ごせるように・・・Let‘s D.I.Y!!(青木)

 

すばこだより 11月号(PDF版)

 

これまでのすばこだよりはこちら